〈内なる調和〉
ドクターは2020年にインプラント実験に関する論文を公表している。これはインプラント周囲炎と呼ばれる疾患にフリタージュ反応が関与しているという内容である。その研究に対する評価は今後の課題ではあるが、人体のマイクロバイオームについての独創的な知見であることは疑いない。
コロナも終息の兆しを見せているが、銘記しておくべきことは決してコロナウイルスが消滅したわけではないということである。目には見えないが、私たちの周囲にはバクテリアやウイルスが蔓延しており、私たちの体内にも数多くの微生物が生息しているのである。
よく知られているのは腸内細菌だが、これは1000種類以上の微生物が100兆個も存在すると言われており、その活動は免疫細胞にも大きな影響を与えている。また虫歯を作り出す微生物は口腔細菌と呼ばれており、口の中に700種類以上のバクテリアが1000億個も生息していると言われている。
ドクターのインプラント実験はこの口腔細菌による元素転換反応を示唆するものだが、たとえば歯周病がメタボリックシンドロームを引き起こすメカニズムにも、このような口腔細菌の特殊な反応プロセスが関与しているのかもしれない。
腸内細菌も口腔細菌も食生活やストレス、体調管理などのセルフメンテナンスによってマイクロバイオームの構成も変化していくだろう。それによって体内のフリタージュ反応の最適化と効率化を実現する方法論も確立されてゆくと考えられる。そこに見出だされるのは自己と他者の共生による内なる調和という境位なのかもしれない。
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