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2021/06/04

不可能の論文

「花崗岩の起源と原子核物理学」のオペが終了した。しかし一回のオペで完成するほどG・シューベルの論文は生易しくはない。

この論文は三部構成になっており、それぞれのタイトルは以下のとおりである。

(1)造山運動の山脈の規模における花崗岩の問題

(2)原子核パリンジェネシス仮説

(3)岩石成因論の諸問題に対する原子核パリンジェネシス仮説の適用

この第一部ではG・シューベルが1930年代から調査してきたモロッコ全域の花崗岩分布について解説されているが、その詳細については彼の過去の論文を調べなければ正確に理解することは困難である。暫定的に翻訳はしているが、今後も裏付け調査が必要である。

第二部では原子核パリンジェネシス仮説の概要について記述されているが、これについても検討すべき点が多く含まれている。特に兄のボリス・シューベルの著作『マグマの地球化学と統計的不変性』に一定の影響を受けている点は非常に興味深い。私の知る限り、ジョルジュがボリスの研究を引用している個所はこれ以外には存在しない。

第三部は一つの試論ともいえるものだが、花崗岩化作用だけではなく接触変成作用などにも原子核パリンジェネシスの適用を試みている。このきわめて独創的な知見は後の論文の内容にもつながってくるものであり、われわれが認識している地球科学の概念を転換させるものである。

現時点でこれらの内容を詳細に解説することは不可能に近いが、G・シューベルがなぜ原子核パリンジェネシス仮説の構築に至ったのか、その眼差を追ってゆきたいと思う。


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