虚構のブリコラージュ
G・シューベルは地質学者として数多くの論文を公表しているが、原子核パリンジェネシスについて記述した論文は限られている。その理由の一つとして、ケルヴランは自分の著作のタイトルに生物学的元素転換という言葉を使っているが、G・シューベルは論文のタイトルに決して原子核パリンジェネシスという言葉を使わなかったということが上げられる。
これは一見不思議に思われるが、ごく普通の地質学の論文の中に原子核パリンジェネシスという独創的な仮説を織りこむことによって斯界のコンセンサスを探ろうとした彼の深慮遠望が伺える事実ではある。しかしそのおかげで通常のキーワード検索で論文を見つけることはほぼ不可能であり、一次資料の収集は困難をきわめる状況になっている。しかも各論文の内容は非常に専門的なテーマに基づいており、地質学の様々な分野に関する予備知識がなければ解読することはまず不可能である。
このような難題にあえて取り組む理由はG・シューベルがケルヴランの共同研究者だったからではない。熟練した地質学者としての彼の言葉には否定できない深みがあるからである。
たとえば現代でも地質学の領域で常温核融合が生じていることを示唆する科学者も存在する。コールド・フュージョンの立役者の一人であるS・E・ジョーンズとJ・E・エルズワースやカザフスタンのG・V・タラセンコ、東北大学の福原教授がそうである。
しかしながらその内容は、常温核融合におけるD-D反応やP-D反応を地球内部の高圧環境に想定するような底の浅い見解に基づいており、自説を敷衍するために恣意的に構築されたブリコラージュに過ぎない。長年にわたって世界各地でフィールドワークを行なってきたG・シューベルの論理的帰結とはおよそ程遠いものがある。
はたして彼が最後まで探究したこの鉱脈にいかなるレアメタルが眠っているのか、深い闇を穿つばかりである。
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