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2020/10/22

もう一つの真実

フリタージュ関連資料のデータベース化のための集約作業を進めるうちに新しい資料も見つかるようになっている。その一つが『カイエ・ラショナリステ』207号である。

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1962年11月に発行されたこの雑誌には、G・レストラとJ・ロワゾーによるケルヴランへの批判記事「生命体と元素転換」が掲載されている。『フリタージュの真実』のフリタージュ・クロニクルを確認してもらうとわかると思うが、この記事はケルヴランが第一作となる『生体による元素転換』を出版した直後に公表されたもので、ケルヴランに対する批判としては最も初期のものに該当する。

記事の内容は『プラネート』第4号に公表されたケルヴランの論考に対する批判ではあるが、それよりも注目すべきはこの雑誌の出版元のユニオ・ラショナリステである。ユニオ・ラショナリステは「合理主義者協会」という意味だが、1930年に創設された国際的なNPOであり、フランス内外の研究者やノーベル賞受賞者がメンバーとして名を連ねている。有名なところではF・ジョリオ・キュリーやB・ラッセル、L・ポーリングといった科学者が加入しており、現在も活動を続けているようである。

『カイエ・ラショナリステ』の冒頭には当時ユニオ・ラショナリステの事務局長を務めていた生化学者のE・カハネが寄稿しているが、このカハネは後に『レゾ・プレザンテ』におけるケルヴランとの論争に絡んでくる人物である。

G・レストラとJ・ロワゾー、そしてE・カハネの関係性はまだ明らかではないが、もしかすると彼らが所属していたユニオ・ラショナリステが後のフランス農学アカデミーにおける「異端審問」の遠因になった可能性も考えられる。そうすると『フリタージュの真実』の文脈も全く異なる様相を呈することになるだろう。

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