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2020/03/14

和平の剣

G・シューベルはバランジェもケルヴランも元素転換説を公表していない時代に、地質学において特殊な核反応が生じていることを独自に主張した。それが原子核パリンジェネシスである。彼はこの原子核パリンジェネシスが花崗岩化作用において生じていると考えていたが、なぜシューベルは花崗岩の形成プロセスに着目したのだろうか?それにはまず花崗岩の成因に関する長い論争の歴史を理解する必要がある。

1920年代にカーネギー研究所のN・L・ボーエンは珪酸塩熔融体の実験に基づいてマグマの晶出に関する反応系列(ボーエン・トレンド)を確立した。このボーエン・トレンドに依拠する花崗岩の形成プロセスは、上部マントルに含まれる橄欖岩の部分熔融によって生じた玄武岩質マグマの結晶分化作用によって進行するとされている。

このボーエン・トレンドはその後の論争を経て一つの定説として容認されるようになったが、玄武岩質マグマから形成される花崗岩質マグマは最終的に5~10%に満たないという欠陥もあり、現代でも以下のような批判がされている。

ダウンロード - sc403.pdf

これに対して変成岩説は、地下深部で変成作用を受けた堆積岩が液体の状態になることなく花崗岩に変化したという説だが、その形成プロセスについては様々な見解があり、固相状態においてイオンの拡散や成分の置換が生じたとする説もあれば、アイコアやエマネーション、ポレンマグマといった岩石を花崗岩化する溶液の介在を想定した研究者も数多く存在する。変成岩と花崗岩が混在するミグマタイトのような岩石はこうした立論の物証とも考えられている。

このように地質学界を二分する対立構造の中にG・シューベルが振りかざした剣は論敵と切り結ぶためではなく、両者の陣営を和解させるためのものだった。まずはそこに至る経緯をひも解くことにしよう。

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