ゲーテを継ぐ者
いかなる研究もその背景にあるものを正しく理解しなければ、その本質的な価値を適切に評価することはできない。G・シューベルが提唱した花崗岩化作用に関する原子核パリンジェネシス仮説も同様である。
地球は中心部にある核とその周囲のマントル、そして表層部の地殻によって構成されている。この地殻は大陸地殻と海洋地殻に大別され、前者は花崗岩質、後者は玄武岩質の岩石によって形成されている。すなわち花崗岩は大陸地殻の基盤となるリソスフェアであり、非常に多様性に富んだ岩石でもある。
ドイツの詩人ゲーテはニュートンとは異なる色彩理論や植物のメタモルフォーゼといった自然科学の研究を行なったことが知られているが、ワイマール公国枢密院参事官としてイルメナウ鉱山の開発にも携わっていたので地質学にも造詣が深く、いくつかの研究資料を残している。
その一つの「地質学における動的原理」には、花崗岩に含まれている石英・長石・雲母といった鉱物が三位一体であり、もしこの調和が失われたときには鉱物のメタモルフォーゼが生じることが示唆されている。
「花崗岩の構成要素が別の岩石になるという多様性をもつなら、別の岩石が花崗岩に変化する可能性もあるだろう。」
はたしてG・シューベルがこのようなゲーテの言葉を知っていたかどうかは定かではないが、はからずも現代の地質学において鉱物のメタモルフォーゼを提唱する役割を担ったことには違いない。しかしそこには幾多の困難が待ち受けていたのである。
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