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2020/01/28

ゲーテを継ぐ者

いかなる研究もその背景にあるものを正しく理解しなければ、その本質的な価値を適切に評価することはできない。G・シューベルが提唱した花崗岩化作用に関する原子核パリンジェネシス仮説も同様である。

地球は中心部にある核とその周囲のマントル、そして表層部の地殻によって構成されている。この地殻は大陸地殻と海洋地殻に大別され、前者は花崗岩質、後者は玄武岩質の岩石によって形成されている。すなわち花崗岩は大陸地殻の基盤となるリソスフェアであり、非常に多様性に富んだ岩石でもある。

ドイツの詩人ゲーテはニュートンとは異なる色彩理論や植物のメタモルフォーゼといった自然科学の研究を行なったことが知られているが、ワイマール公国枢密院参事官としてイルメナウ鉱山の開発にも携わっていたので地質学にも造詣が深く、いくつかの研究資料を残している。

その一つの「地質学における動的原理」には、花崗岩に含まれている石英・長石・雲母といった鉱物が三位一体であり、もしこの調和が失われたときには鉱物のメタモルフォーゼが生じることが示唆されている。

「花崗岩の構成要素が別の岩石になるという多様性をもつなら、別の岩石が花崗岩に変化する可能性もあるだろう。」

はたしてG・シューベルがこのようなゲーテの言葉を知っていたかどうかは定かではないが、はからずも現代の地質学において鉱物のメタモルフォーゼを提唱する役割を担ったことには違いない。しかしそこには幾多の困難が待ち受けていたのである。

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2020/01/09

不可視のヴァーチュオーソ

Nov25168_20200109151801ケルヴランが生物学的元素転換の概念を提唱したのは1960年であり、P・バランジェが植物による元素転換の研究を開始したのは1955年に遡られる。 だがそれ以前に自然界における元素転換反応の実在を主張した科学者がいた。それはフランスの高名な地質学者のG・シューベルである。

ケルヴランの著作『地質学における微量エネルギー元素転換』には、パイロープ高圧プレス実験の共同研究者としてG・シューベルの名前が出てくるのでケルヴランの追従者と誤解している人もいるかもしれないが、それはケルヴランの文脈に過ぎない。

G・シューベルが花崗岩化作用における原子核パリンジェネシスの概念を提起したのは、これまでの調査で1947年であることが判明している。そしてその後30年以上にわたって、様々な論文の中で地質学におけるフリタージュ反応の可能性を考察しているのである。このたぐい稀な地質学者こそが最初に刀を振りかざし、そして最後に勝利を収めるヴァーチュオーソである。

はたして彼が提唱した原子核パリンジェネシスの本質とは何か。そしてG・シューベルの孤高の闘いとはいかなるものだったのかを今後検証していきたいと思う。

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