ルシアンの策謀
L・スービエとR・ガデがバランジェの再現実験を実施した期間は1961年4月17日から5月25日とされている。この実験自体はアカデミーとは直接の関係はないが、後の異端審問を受けて1972年1月にS・エニンによって農学アカデミーの定例会議で公表されている。
ガセロンによると、実は1963年2月の農学アカデミーにおいてルシアン・オドディールという人物がバランジェの研究を批判しており、そこには二つの組織が関与しているという。その組織とはスービエが所属していた国立窒素産業協会(ONIA)とアルザスカリ岩塩商社(SCPA)である。
ONIAとSCPAはいずれも化学肥料の原料を供給する企業体であり、共同の農業研究も行なっていたという。両社は当時国策として推進されていた化学肥料による合理的な農業生産を支える役割を担っていた。
バランジェを批判したとされるL・オドディールは農学アカデミーのメンバーであるとともにSCPAの理事も務めていた。詳細な経緯は明らかではないが、ONIAとSCPAはバランジェの研究について情報を共有しており、アカデミーの内外でその言動を封殺しようとしていたようである。そしてその動きはケルヴランの時代にはINRAのS・エニンとL・ゲゲンによって引き継がれるようになったといえるだろう。
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