不可解なコリアン・レポート
昨年の5月、韓国のプサンで「放射性廃棄物の処理への微生物の応用方法に関する国際学会」が開催された。ドクターはビザの関係で韓国に行くことはできなかったが、元素転換に関するレポートを提出し、スカイプで部分的に参加したようである。
この学会で公表された論文は今年の2月に集約され、関係者に配布された。ドクターのレポートの内容は少し変更されている点もあるが、これまでの論文をほぼ踏襲したものである。
この論文集の中で注目すべき研究は4人の韓国人による「多成分の微生物によるセシウム137の放射能低下に関する実験」というレポートである。それによると、彼らは10種類の微生物をセシウム含有溶液に入れて放射線量を一か月測定したところ、最初の5日間は線量がわずかに増加したが、その後は次第に減少して、最終的に線量は15%減少したと報告している。そしてこの放射能の増減は元素転換プロセスが二段階で生じていることを示していると結論している。
この韓国人の研究レポートにはいくつかの問題点があるが、まず一つは実験に使用した微生物の学名を正確に記載していない点が上げられる。ドクターの著作や論文では、使用した微生物の名称は「エシェリヒア・コリK1」のように必ず国際的な学名で表記されている。しかし彼らの論文には「放射能耐性菌のバチルス属、嫌気性のラクトバチルス、好気性バクテリア」といった記述しかなく、使用された10種類の微生物の学名は明記されていない。
この点について韓国人研究者の一人にメールで照会したところ、現在特許申請中なので詳細を明らかにすることはできないという回答だった。その事情はわからなくもないが、研究情報が開示されないのであれば実験結果を検証することはまず不可能である。ただの自己顕示欲と承認欲求を満たすために論文を公表したのかと疑いたくもなる。
次に彼らはセシウム溶液の放射能をゲルマニウム半導体検出器で断続的に線量測定しているが、それ以上の調査、つまり微生物や溶液の組成成分やバリウムの同位体検出などを全く行なっていない。ドクターの研究を知っている人はわかると思うが、組成分析を行なわない元素転換の研究などありえないのである。それなのに線量の一時的な変化だけで元素転換反応が二段階で生じているなどという言葉に科学的根拠は全くなく、見当違いも甚だしいといえる。
断わっておくが、私は韓国の人々に特別な感情はもっていない。以前に韓国から『生物学的元素転換』を注文してくれた人もいたが、日本人と同じく細やかな気づかいのできる方だった。しかし真理を追究するためには一切の妥協や忖度は許されない。彼らがさらに組成分析をともなう調査を進めない限り、今の段階では研究ごっこと言われても仕方ないだろう。
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コメント
こんにちは。
私も同感です。
使用されたサンプルの詳細がないのでは、再現性を確認するのが難しくなります。
二段階で発生しているというのであればなおさらです。
膨大な時間をかけなければいけないのは分かりますが、試験方法を考えるなど工夫があっても良かったです。
投稿: 吉野 | 2019/05/11 23:14
コメントありがとうございます。彼らのレポートには問題がありますが、前向きに研究を進めているという点では日本より先行していると言えるでしょう。
元より日本の研究者には期待していませんが、私たちは独自の世界を目指すばかりです。
投稿: Frittage | 2019/05/12 00:22