『シューマン共振概論』
シューマン共振についてはこれまでも様々な論文や著作が公表されているが、一年ぐらい前に『シューマン共振概論』という本を入手して少しずつ読み進めている。スプリンガー社から出版されているこの著作は現代におけるシューマン共振に関する研究書の中でも最高峰といえる内容である。
この本はウクライナの地球物理学者、アレクサンダー・ニコラエンコと早川正士教授の著作だが、シューマン共振の豊富な観測データに基づいており、なおかつ理論構成がしっかりしている。ニコラエンコの英文はドクターと同じようにウクライナ訛りがあり、かなり専門的な記述も多いので初心者が理解することは難しいと思うが、 シューマン共振の一般的理解にしかない人にとっては挑戦する価値のある労作である。
この著作の中で興味深いのは、シューマン共振の変動成分を観測することによって地震を予知することができると早川教授が考えていることであり、実際に台湾で起きた地震とシューマン共振の異常に相関性が観察されたと記されている。
この点については信憑性を疑う人もいると思われるが、地殻のプレート運動によって生じたピエゾ効果が空気コンデンサーとしての大気圏を通して電離層の変動に反映されると考えると理論的には納得できる。ただし、実際の観測データの異常を地震の前兆現象として捉えることはかなり困難な側面があるようにも思われる。
思えばこれまでにも地震の前兆現象として、地震雲や椋平虹、動物の異常行動などがその時々のトピックとして取り上げられてきたが、最近ではあまりそういう話を聞かないような気がする。シューマン共振だけでそれらを統一的に解釈することは難しいかもしれないが、地震による異常が何らかの波動として生物の脳波や電離層に影響を与えている可能性を考えてみるのも一興だろう。
天変地異とか驚天動地という言葉の奥には、実は知られざる天と地の相克が反映されているのかも知れない。
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