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2019/05/17

『シューマン共振概論』

シューマン共振についてはこれまでも様々な論文や著作が公表されているが、一年ぐらい前に『シューマン共振概論』という本を入手して少しずつ読み進めている。スプリンガー社から出版されているこの著作は現代におけるシューマン共振に関する研究書の中でも最高峰といえる内容である。

Photo この本はウクライナの地球物理学者、アレクサンダー・ニコラエンコと早川正士教授の著作だが、シューマン共振の豊富な観測データに基づいており、なおかつ理論構成がしっかりしている。ニコラエンコの英文はドクターと同じようにウクライナ訛りがあり、かなり専門的な記述も多いので初心者が理解することは難しいと思うが、 シューマン共振の一般的理解にしかない人にとっては挑戦する価値のある労作である。

 この著作の中で興味深いのは、シューマン共振の変動成分を観測することによって地震を予知することができると早川教授が考えていることであり、実際に台湾で起きた地震とシューマン共振の異常に相関性が観察されたと記されている。

この点については信憑性を疑う人もいると思われるが、地殻のプレート運動によって生じたピエゾ効果が空気コンデンサーとしての大気圏を通して電離層の変動に反映されると考えると理論的には納得できる。ただし、実際の観測データの異常を地震の前兆現象として捉えることはかなり困難な側面があるようにも思われる。

思えばこれまでにも地震の前兆現象として、地震雲や椋平虹、動物の異常行動などがその時々のトピックとして取り上げられてきたが、最近ではあまりそういう話を聞かないような気がする。シューマン共振だけでそれらを統一的に解釈することは難しいかもしれないが、地震による異常が何らかの波動として生物の脳波や電離層に影響を与えている可能性を考えてみるのも一興だろう。

天変地異とか驚天動地という言葉の奥には、実は知られざる天と地の相克が反映されているのかも知れない。

 

 

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2019/05/05

不可解なコリアン・レポート

昨年の5月、韓国のプサンで「放射性廃棄物の処理への微生物の応用方法に関する国際学会」が開催された。ドクターはビザの関係で韓国に行くことはできなかったが、元素転換に関するレポートを提出し、スカイプで部分的に参加したようである。

この学会で公表された論文は今年の2月に集約され、関係者に配布された。ドクターのレポートの内容は少し変更されている点もあるが、これまでの論文をほぼ踏襲したものである。

この論文集の中で注目すべき研究は4人の韓国人による「多成分の微生物によるセシウム137の放射能低下に関する実験」というレポートである。それによると、彼らは10種類の微生物をセシウム含有溶液に入れて放射線量を一か月測定したところ、最初の5日間は線量がわずかに増加したが、その後は次第に減少して、最終的に線量は15%減少したと報告している。そしてこの放射能の増減は元素転換プロセスが二段階で生じていることを示していると結論している。

この韓国人の研究レポートにはいくつかの問題点があるが、まず一つは実験に使用した微生物の学名を正確に記載していない点が上げられる。ドクターの著作や論文では、使用した微生物の名称は「エシェリヒア・コリK1」のように必ず国際的な学名で表記されている。しかし彼らの論文には「放射能耐性菌のバチルス属、嫌気性のラクトバチルス、好気性バクテリア」といった記述しかなく、使用された10種類の微生物の学名は明記されていない。

この点について韓国人研究者の一人にメールで照会したところ、現在特許申請中なので詳細を明らかにすることはできないという回答だった。その事情はわからなくもないが、研究情報が開示されないのであれば実験結果を検証することはまず不可能である。ただの自己顕示欲と承認欲求を満たすために論文を公表したのかと疑いたくもなる。

次に彼らはセシウム溶液の放射能をゲルマニウム半導体検出器で断続的に線量測定しているが、それ以上の調査、つまり微生物や溶液の組成成分やバリウムの同位体検出などを全く行なっていない。ドクターの研究を知っている人はわかると思うが、組成分析を行なわない元素転換の研究などありえないのである。それなのに線量の一時的な変化だけで元素転換反応が二段階で生じているなどという言葉に科学的根拠は全くなく、見当違いも甚だしいといえる。

断わっておくが、私は韓国の人々に特別な感情はもっていない。以前に韓国から『生物学的元素転換』を注文してくれた人もいたが、日本人と同じく細やかな気づかいのできる方だった。しかし真理を追究するためには一切の妥協や忖度は許されない。彼らがさらに組成分析をともなう調査を進めない限り、今の段階では研究ごっこと言われても仕方ないだろう。

 

 

 

 

 

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