人工進化とフリタージュ
SFアニメ『キャプテンフューチャー』には人工進化をテーマにしたいくつかのストーリーが収録されている。たとえば「惑星タラスト救出せよ!」では、あらゆる環境に適応できるように人間を改良するために人工進化の技術が実現されているが、その技術によって生み出されたミュータントは開発した研究者を抹殺し、人類を滅亡に追いやろうとする。近年、ゲノム編集という言葉を耳にすることも増えてきたが、私たちはまさにこの人工進化の入り口に立っているのかもしれない。
第3世代のゲノム編集ツール「クリスパーCAS9」の登場によってゲノム編集の領域は格段の自由度を得るようになった。いまやゲノム編集された微生物をワンクリックで買える時代である。また従来の遺伝子組み換え食品に加えてゲノム編集食品もまもなく登場する見通しだが、消費者の懸念を払拭するために表示義務化が審議されているようである。これについてEUは遺伝子組み換え食品と同様の規制を行なう方針だが、アメリカでは規制しないらしい。つまり国内のゲノム編集食品は表示されるかもしれないが、海外から輸入されるものは対象外ということになる。
また近年ではいくつかの大学でゲノム育種による微生物の形質改良の研究が進められている。アメリカのスクリプス研究所では、すでに2014年に大腸菌に組み込んだ人工塩基対の複製に成功している。このような手法を応用すれば元素転換反応を効率化することも不可能ではないだろう。ただし、それはゲノム編集食品のようなリスクを含んでいることを忘れてはならない。
キャプテンフューチャーは「人類は自然の中でゆっくりと進化することが最上なのだ。」と語っていた。エゴの欲望を叶えるために科学技術を濫用する者はしかるべき代償を負うことになる。私たちはすでにそのことを知識としては知っている。しかし、これから待ち受ける未来に反映することができないのであれば、そのような借り物の知識に意味はない。愚かな選択がいかなる結末を招くことになるのか、現代を生きるわれわれはしかとわきまえるべきであろう。
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