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2018/12/25

フリタージュの反応環境

ヴィソツキー博士は20年以上にわたって生物学的元素転換の研究を行ない、様々な成果を上げてきた。その研究活動に対して私はリスペクトしているし、だからこそ15年も交流を続けている。しかしこれまでに検討してきたように、常温核融合とフリタージュは理論的にも実験的にも共通点がなく、CCSで元素転換反応を説明することはほぼ不可能である。

たとえばその反応環境を比較しても、コールドフュージョンはニッケルやパラジウムなどの重い元素による固体結晶がメインになるが、元素転換反応は様々な軽い元素がイオン化している細胞が中心的なステージである。ドクターの実験ではメタン菌によってセシウムと水素が融合してバリウムが生成されることが示されているが、この反応をCCSで説明しようとすると様々な疑問点が出てくるのである。

原核細胞と真核細胞には構造的な相違点があるが、細胞内外にはナトリウムイオンやカリウムイオン、燐酸イオンなど様々な元素が存在している。その中でなぜセシウムと水素だけにCCSが生じるのだろうか?もしそれがディスクリート・ブリーザーによって誘導されるなら、セシウムとナトリウムが融合したり、カリウムと酸素など様々な元素転換反応が無作為に生じるはずである。

逆にセシウムと水素だけに元素転換反応が生じるということは、そこには生体組織特有の選択性と特異性を実現するシステムがあるとしか考えられない。フリタージュ反応のメカニズムはCCSの裏側に潜むこの選択性と特異性によって実現されているのである。

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2018/12/13

視えない音叉に導かれて

ヴィソツキー博士はCCSによる量子的トンネル効果の効率化によって元素転換反応が生じていると主張している。しかしこのドクターの見解に同調する科学者はそれほど多くない。その中で唯一といえるほど積極的な評価をしているのがハリコフ物理技術研究所のウラジミール・ドビンコである。

ドクターに確認したところ、ドビンコは共同研究者ではないがCCSに関する情報交換を行なっているらしい。そのドビンコの論文「局所的非調和振動による核触媒作用」には以下のように記述されている。

「十分な非調和性をもつ非線形多体系において特殊な格子振動、すなわち局所的非調和振動(LAVs)は熱エネルギーないし外的な要因によって励起されうる。LAVsはシュレディンガーとロバートソンによって発見された相関作用による量子的トンネル効果に強力な影響を与えうる。このような作用は数多くの研究者によってトンネル効果の問題に適用されているが、彼らは量子系の高い周期的作用における相関係数の増加によるサブバリアー透過性の莫大な増加を実証している。」

「最近提起されているディスクリート・ブリーザーは井戸型ポテンシャルの周期的変調によって結晶に最も自然かつ有効な形で相関効果を生じるため、固体における低エネルギー核反応を触媒するナノ・コライダーとして機能していると考えられている。」

Dubinkoディスクリート・ブリーザーとは非線形格子系において空間的に局在する周期振動解である。このディスクリート・ブリーザーによって発生する局所的非調和振動(LAVs)が井戸型ポテンシャルの周期的変調を引き起こしてCCSを現象化させるというのが、ドビンコの描くコールド・フュージョンのストーリーである。

わかりやすく例えると、CCSは二つの原子の量子レベルの共振状態であり、その共振周波数に相当する振動がLAVsであり、ディスクリート・ブリーザーはそれを発生させる音叉ということになる。この視えない音叉によって発生したLAVsが特定の原子のポテンシャルを周期的に共振させ、古典的粒子として扱うことのできるポテンシャル内のガウス波束を相関状態へと誘導することになる。

このメカニズムはなかなか興味深いが、この理論が適用できるのは固体結晶のコールド・フュージョンだけであり、フリタージュ反応には適用できない。材質や形状によって音叉の周波数が変化するように、生体組織においてディスクリート・ブリーザーという概念は成立しないからである。

ドクターは常温核融合と元素転換反応はいずれもCCSによって生じていると主張しているが、ディスクリート・ブリーザーのメカニズムではそれはまず不可能である。いうなれば金属の音叉とゴムの音叉で同じ周波数の音が出せるというようなものだからである。われわれはCCSを超える独自の道を模索する時期にさしかかっているのかもしれない。


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2018/12/01

V・V・ドドノフの理論

さて少し余興が過ぎたようだが、ここでドクターのCCS理論を再考することにしよう。

CCS理論についてはこれまでのフリタージュ会議におけるドクターの講演、そして『未来のフリタージュ』の中でその概要が示されているので、ここでそれを繰り返すつもりはない。しかしCCSはドクターが着想した概念ではなく、もともとはロシアの物理学者V・V・ドドノフが1980年代に展開した理論がベースになっている。

Img053ロシアの研究機関、レベデフ物理学研究所が1993年に発行した研究論文集『量子系におけるスクイーズド状態と相関状態』には、V・V・ドドノフとA・B・クリモフによる論文「量子的相関状態における物理的効果」が収録されている。

この論文の中でドドノフは、専門である量子光学の観点から理論的検討を行なっているが、相関状態にある波動関数としてのガウス波束の分散とポテンシャルバリアーの通過、および相関係数を含む有効プランク定数が結論的に導き出されている。この記述内容はCCSに関するドクターの論文にそのまま引用されており、ドクターが付け足したことといえばポテンシャルの膨張・収縮にともなうトンネル効果のシミュレーションだけである。

問題となるのは量子論のお遊びではなく、実際にCCSが現象化されうるのか、そしてフリタージュ反応のメカニズムとして機能しうるのかという点である。これについて次に検討してみよう。

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