上野から羽田へ
11月26日、案の定眠れないまま朝を迎えた私は、ドクターのチェックアウトに合わせてAM10:00にホテルに迎えに行った。弟とは11時に上野駅で会う約束だった。そこで駅で荷物を預け、上野公園で時間をつぶすことにする。上野公園には今回初めて立ち寄ったが、紅葉がきれいに色づいていて落ち着ける場所だった。
弟から駅に着いたというメールが届いたので上野駅の中央改札口に行ったが、どこにも姿はない。メールをチェックすると上野公園に向かったようで、どうも行き違いになったらしい。下手に動かないほうがいいと思ったのでクリスマスツリーの所で待っているとようやく弟が現れた。
ドクターは弟のことを覚えていて、5年前と同じように三人でスカイツリーに向かうシャトルバスに乗りこんだ。スカイツリーに着くと4Fのテラスで少し写真を撮って、天望デッキに向かうエレベーターに乗った。天気は良かったが、天望デッキからの眺望は少し白くかすんでいて富士山はわずかにわかる程度だった。しかしドクターは都会の眺望をけっこう楽しんでいて、パンフレットを見ながら確認していた。
そこそこ歩き疲れた私たちは天望デッキのスカイツリーレストランで休憩を取ることにした。ドクターはオレンジジュース、私はアイスカフェラテ、弟はアイスコーヒーで、サンドイッチを一皿注文してみんなで食べようとしたのだが、二人ともいらないというので私一人で完食した。
弟と相談してスカイツリーの後は浅草寺に向かった。隅田川を越えて駅に着いて歩いていくと、意外なことに昨日七沢研究所のスタッフと歩いたところである。昨夜はコートをホテルに置いてきたので寒い思い出しかない。弟はどんどん先に歩いていくので姿を見失ってしまい、ドクターと二人きりで境内に入った。日曜日なので人出も多く、落ち合えないと思ったので、弟には駅で待っているように伝えた。浅草も今回初めて来たのだが、昨夜の一件があって心から楽しめない自分がいた。
浅草から上野に戻って荷物を引き取ると、ドクターは一人で羽田まで行くという。しかし話を聞くと路線もよくわかっていないようなので京急蒲田駅で羽田行きの電車に乗せて見送ろうという話になった。電車を乗り継いで京急蒲田駅に着くと、ドクターを電車に乗せて手を振った。これで何とか無事に今回の旅も終えることができたと安心した。あとは扉が閉まり、発車するのを待つばかりである。
そのときだった。振りかえると上を見上げていた弟が手を振った。「ドクター !」私はとっさにドクターに電車から降りるように促した。途端に発車のベルが鳴り響く。驚いたドクターの後ろでドアが閉まると弟が指さした。発車したのは羽田空港行きではなく、新逗子行きの電車だった。
「最後に来たか。」今回の旅の流れを見て気をつけてはいたが、危うくドクターの姿を見失うところだった。そしてドクターを羽田行きの電車に乗せて、ようやく旅の締めくくりをすることができた。
今回の旅を終えて思うことは、人は流れを変えることはできないが、タイミングを調節することで最悪の事態を回避することができるということである。そして厳しい状況に陥ったときには必ず救いの手が差し伸べられるということも。
だが今回のようにすきを突かれるということは、まだ私のどこかに甘さがあるということかもしれない。その点はしかるべく反省し、精進すべきだろう。
私は旅が嫌いなわけではない。しかし目に視えないものとの闘いが、ときに辛く感じるだけである。
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