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2017/11/30

波乱の予兆

11月21日、私は電車を乗り継いで成田に向かっていた。次の日に来日するドクターを迎えるために。

私は旅が嫌いなわけではない。しかし小汚い都会の雑踏はどうも好きになれない。できれば風情のある田舎のほうが好きなのだが、ドクターの来日なら仕方がない。覚悟して臨むまでである。

11月22日、この日のAM9:45にドクターの搭乗した飛行機が到着すると聞いていたので、私は成田空港に向かった。成田空港にはターミナル1とターミナル2があるが、どちらに到着するかははっきりしていなかったので、とりあえず手前のターミナル2に向かった。ターミナル2の国際便到着ゲートに行くと、フライトボードにAM9:45のイベリア航空便がすでに到着していた。通関に1時間ほどかかると聞いていたので、そのうち出てくるだろうと気長に待つことにした。

ところが11時半が過ぎてもドクターはゲートから姿を見せなかった。出てくるのは後続の便の乗客らしくヨーロッパ系ではない。何かがおかしいと気づくのに時間はかからなかった。

ドクターの行動パターンを考えると、到着ゲートから出て下手に動くことは考えられない。そこで構内アナウンスをかけてもらったが一向にドクターの姿は見えないし、第一気配が感じられない。

このままここにいても無駄だ。そう思って一旦ホテルに戻ることにした。ドクターを迎えに行くだけだと思ってスマホや携帯は置いてきたが、ホテルに戻ると案の定、ドクターと七沢研究所から連絡が入っていた。それによるとドクターはターミナル2ではなくターミナル1で待っているという。

私はエレベーターでスマホを操作しながら、もう一度空港に向かった。ターミナル1の待合室にいるドクターを見つけたのは午後1時過ぎのことだった。
ドクターもパソコンからメールを送っていたが、私の返信はチェックしていなかったようである。ともかく最初の段階から今回の旅は波乱の兆候を暗示していたらしい。

ホテルのチェックインを済ませると、少し休憩して3時から成田山に行くことにした。夏は祭りの最中だったのでなかなか前に進めなかったが、今回は人通りも少なく、落ち着いた風情が感じられた。この時にドクターはデジカメを持っていなかったので、帰国するときにまた立ち寄ろうと何気なくいうと、羽田から帰国するからそれは無理だという。
「羽田?」

私はてっきり成田から帰国するものと考えてホテルの予約も済ませていた。羽田となると、これからホテルを探さなければならない。旅はまだ始まったばかりだった。

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2017/11/13

フリタージュ・ゲノムと共生進化論

原核生物の細胞融合から真核生物への共生進化が始まったことは今日の生物学においてもほぼ定説になっている。しかし現代の進化論においてもまだ解明されていない最大の謎がある。それはどの細菌とどの細菌がどんな形で共生関係を構築して、複雑な真核細胞の原型を作り上げたのかという問題である。

これに対して現代の生物学者は様々な仮説を提起している。比較的主流とされるものは「水素仮説」と呼ばれており、これはミトコンドリアの祖先のαプロテオバクテリアとメタン菌が細胞融合したというものである。しかし好気性のαプロテオバクテリアと嫌気性のメタン菌がどのような環境で共生関係になったのかは不明であり、また真核細胞にメタン菌のゲノムが残っていないという問題点もある。

この水素仮説以外にもエオサイト説やネオムラ説、TACK説、「生命の輪」といった仮説も提起されているが、いずれも同様の問題点を抱えており、この進化論最大の謎は解明には至っていない。

ここでフリタージュと進化の歴史を思い出してもらいたい。原核生物も真核生物も同様に元素転換能力をもっていることはドクターの研究によって証明されている。つまり生命の進化の歴史の中でフリタージュ反応をコードしているゲノムは失われずに残っているである。

私たちにはビタミンCが必要であるにも関らず、ビタミンCを体内で合成することはできない。それは私たちの先祖がビタミンCを含む果実を容易に入手できる環境にいたため、ビタミンCを合成するDNAが機能しなくなったためだとされている。ところが元素転換反応は原核生物・真核生物、あるいは嫌気性微生物でも好気性微生物でも発現している。それはこの反応を制御しているDNAが存在しているからである。

このDNAを仮にフリタージュ・ゲノムと呼ぶなら、おそらくそれは進化の過程の中で連綿と受け継がれてきたと考えてよいだろう。つまりこのフリタージュ・ゲノムを解読して、各微生物の遺伝子地図と照合すれば様々な仮説は自然と淘汰されてゆき、おそらく真核細胞の形成プロセスを確定することができるはずである。

このようにフリタージュ研究は単に元素転換反応だけではなく、生命の進化の歴史を解明する鍵にもなりうるのである。

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