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2016/07/19

奇跡のリンゴとフリタージュ

先日書店で偶然見つけた本だが、弘前大学の杉山修一氏の『すごい畑のすごい土』という本を読んでいる。これは「奇跡のリンゴ」で知られる木村秋則氏のリンゴ園に関する研究を記したものである。

木村式自然栽培はかなり有名になっており、各県でその自然栽培を実践しようという動きが広がっている。しかし無肥料・無農薬というその栽培方法は従来の農業方式とはかけ離れた方法論であり、疑問をもつ人も少なくない。

杉山教授も自然栽培の全体像を解明したわけではないが、少なくともそこには三つのファクターが関与しているという。それは「植物-土壌フィードバック」と「生物間相互作用ネットワーク」、そして「植物免疫」である。

たとえば木村リンゴ園では特別な肥料を与えていないのに土壌の窒素量は慣行栽培のリンゴ園とほとんど変わらないというデータが得られている。杉山教授はこの現象をリンゴ園に生息する微生物が下草を分解して全体的な窒素循環を促進しているのではないかと考えている。

これはこれで一つの考え方として納得できる部分もあるのだが、全体的な収支のバランスが取れているのかという疑問が残る。その点についてはもう少し実験的なアプローチが必要だと思われる。また杉山教授は、木村リンゴ園には他のリンゴ園の1.5-2倍の微生物が存在するというデータを示しているが、問題はその微生物の種類と生態である。

『未来のフリタージュ』にも記しているが、窒素固定細菌のアゾトバクターやリゾビウム属はニトロゲナーゼという酵素をもっている。このニトロゲナーゼはモリブデンによって活性化されるモリブデン含有ニトロゲナーゼが一般的だが、鉄やバナジウムを含むニトロゲナーゼも存在しており、これらは代替ニトロゲナーゼと呼ばれている。微生物の種属によってはモリブデン含有ニトロゲナーゼと代替ニトロゲナーゼを両方もつものも存在するが、代替ニトロゲナーゼのみをもつ微生物はこれまで発見されていない。

たとえ自然栽培の実践によって多種多様な微生物が生息するようになったとしても、ニトロゲナーゼを活性化する金属触媒がなければ酵素反応は進行しない。そこでどのような微生物がどんなニトロゲナーゼを作り出しているのか、また鉄分やモリブデン、バナジウムが土壌にどれだけ含まれているのかを調べることが必要である。

もしそのような調査を行なっても窒素分の収支が合わないのであれば、モリブデン含有ニトロゲナーゼしかもっていない微生物が鉄分を利用している可能性も考えられる。そうすると酵素反応に必要な金属を微生物が元素転換によって作り出しているという考え方も成立するだろう。杉山教授にはこのあたりまで研究を深めて頂きたいと願う次第である。

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2016/07/01

ホームページ終了について

以前にニフティから連絡が来ていたのだが、これまでに制作しているホームページは9月には閲覧できなくなるそうである。するとケルヴランを中心に記しているサイトはいずれ閲覧できなくなるらしい。

新しい有料のホームページを申し込んでデータを移動させることは可能らしいが、以前に作ったケルヴランのサイトをそのまま作り直すのもどうかと思うので、そのような処置はしないつもりである。

したがってしばらくはこのブログだけということになるが、特別不都合な点がなければこの方針でいくつもりなのでご了承願いたい。

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