生物地球化学とフリタージュ
生物の元素組成に関する問題は『生体系における同位体の元素転換と核融合』の第6章でも検討されているが、その中で少し気になる科学者がいる。それはウクライナの地球化学者V・I・ベルナドスキー(1863~1945)である。
ベルナドスキーはウクライナ科学アカデミーの創設者であり、初代会長としての役割も果たした人物だが、ジオスフェアとバイオスフェアの相関関係を重視し、生物地球化学という分野を確立した研究者でもある。生存環境に存在する主要元素・微量元素に対する生物の適応と進化の関係性についてのヴィソツキー博士の見解は、おそらくベルナドスキーの生物地球科学の世界観を底流とするものである。
ベルナドスキーはジオスフェアとバイオスフェアの相関だけではなく、さらにそこにヌースフェアという領域が成立すると主張していた。このヌースフェアとは盲目的な生存本能に基づくバイオスフェアとは異なり、ある種の社会的な意思に基づく営みをさしており、人間の経済活動やネット社会を示唆しているとも言われている。それはティヤール・ド・シャルダンの思想とも共通するもので、新しい進化のステージを指向しているようである。
ジオスフェア・バイオスフェア・ヌースフェアという三つの領域の関係性の中でフリタージュがどのような形で位置づけられるのかは今後の興味深い課題といえるだろう。
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