変成作用の矛盾点
コロルコフはその論文の冒頭で、正長石から白雲母への変成作用に関する古典的な解釈として、マグマのホットスポットから生じた熱水が花崗岩などの完晶質の岩石に浸透し、正長石が溶解して以下のような反応が生じることを示している。
4KAlSi3O8+H2O=2HKAl2Si2O8+8SiO2+K2O
そしてこの反応によって白雲母と石英は熱水から晶出するとされているが、コロルコフはこのような定説に異論を唱え、以下のような矛盾点を指摘している。
(1)正長石は実質的に不溶性であり、その溶解には莫大な量の水が必要である。また反応によって生じる石英やカリウムは全く見出されていない。
(2)N・M・ウスペンスキーによると、雲母の特徴である完全へき開(001面)は長石に由来する構造であるため、熱水反応が生じたのであれば残存しないはずである。
(3)V・V・チェルニーによると、白雲母に含まれている鉱物の比率は広範囲に変化しており、酸化アルミニウムは19.8~46.2%、珪酸は35.9~53%も変動している。
(4)A・K・ボルディレフによると、雲母の珪酸分はSiO4四面体が平面状に結合したものだが、アルミニウムはその平面上に規則的に分布しているのではなく、ランダムな形で存在している。
このSiO4四面体とは珪素原子を中心として酸素原子が四面体の形に結合しているものである。このSiO4四面体が平面状ないし立体的に結合することによって珪酸塩鉱物の骨格が形成されているのである。
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