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2014/07/18

「自発的」変成作用

正長石から白雲母への変成作用に関する古典的な置換反応に対して、コロルコフはSiO4四面体の珪素がアルミニウムに転換することを主張している。その具体的な反応式は以下のようになる。

Si→Al+H+X

SiO4四面体は珪素が+4の価数、酸素が-2の価数をもっている。この珪素が価数+3のアルミニウムに転換し、+1の水素が生じるために、四面体の酸素の一つは水素と結合して水酸基(OH)に変化する。そして質量欠損に相当する粒子(ないし電磁波)がXとして放出されるという。

なかなか興味深い考え方だが、単独のイオンならともかく酸素に取り囲まれている珪素がなぜアルミニウムに転換するのかが問題である。これについてコロルコフは、安定元素とされる珪素原子にも半減期が存在し、「自発的な」変成作用が生じるという仮説を立てている。

SiO4四面体は珪酸塩鉱物の骨格であり、それぞれの鉱物によって鎖状・平面状・立体状の構造を形成している。その珪素が「自発的に」転換するとしたら鉱物学上の大問題である。わかりやすくいえば水晶玉がアルミニウムのボールに変化するようなものである。

しかしながら何らかの地質学的条件によって、このような特殊な反応が生じる可能性は否定しきれないかもしれない。そしてこうした反応によって地球に存在する大量の水が生み出されたのかもしれないのである。

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2014/07/06

変成作用の矛盾点

コロルコフはその論文の冒頭で、正長石から白雲母への変成作用に関する古典的な解釈として、マグマのホットスポットから生じた熱水が花崗岩などの完晶質の岩石に浸透し、正長石が溶解して以下のような反応が生じることを示している。

4KAlSi3O8+H2O=2HKAl2Si2O8+8SiO2+K2O

そしてこの反応によって白雲母と石英は熱水から晶出するとされているが、コロルコフはこのような定説に異論を唱え、以下のような矛盾点を指摘している。

(1)正長石は実質的に不溶性であり、その溶解には莫大な量の水が必要である。また反応によって生じる石英やカリウムは全く見出されていない。

(2)N・M・ウスペンスキーによると、雲母の特徴である完全へき開(001面)は長石に由来する構造であるため、熱水反応が生じたのであれば残存しないはずである。

(3)V・V・チェルニーによると、白雲母に含まれている鉱物の比率は広範囲に変化しており、酸化アルミニウムは19.8~46.2%、珪酸は35.9~53%も変動している。

(4)A・K・ボルディレフによると、雲母の珪酸分はSiO4四面体が平面状に結合したものだが、アルミニウムはその平面上に規則的に分布しているのではなく、ランダムな形で存在している。

このSiO4四面体とは珪素原子を中心として酸素原子が四面体の形に結合しているものである。このSiO4四面体が平面状ないし立体的に結合することによって珪酸塩鉱物の骨格が形成されているのである。

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