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2014/06/20

珪化木

エレバン・クニーガに収録されているP・A・コロルコフの論文「鉱物と岩石の自発的変成作用」は44ページもあるため、ここではその概要を少し確認するにとどめたい。

この論文の冒頭においてコロルコフは、正長石から白雲母への変成作用が従来の見解としては熱水の影響による化学的置換によるものとされていることを指摘している。(『地質学における微量エネルギー元素転換』P.53)

変成作用というのは岩石や鉱物が化学変化を起こしたものに過ぎないと誤解されるかもしれないが、その認識はまちがっている。変成作用を受けた岩石・鉱物の成分は変化しているが、構造的には元の岩石とほぼ同じである。

わかりやすい例としては珪化木という化石が上げられる。これは地中に何万年も埋もれていた樹木がその形状のままガラス化した化石である。それは土壌の珪酸分が化学的に置換されてできたと考えられているが、本当にそうだろうか?

樹木の構造が変化していないということは、それが破壊されるほどの高温・高圧の状態になったことがないということである。また化学的な置換が生じるには成分元素が水に溶解してイオンにならなければ不可能である。しかしそのような多量の水分が存在していたのであれば樹木の成分の加水分解等が先行的に生じるはずであり、樹木の形状は崩壊していなければならない。

このように考えると、珪化木はほぼ常温・常圧でガラス状に変化したということになる。ケルヴランならおそらく樹木の炭素質成分と酸素が融合して珪素に転換したというフリタージュ反応(C+O:=:Si)を示唆することだろう。

化石や変成岩が実は元素転換反応によるものではないかという視点をもつことによって、コロルコフの文脈をひもといていくことにしよう。

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2014/06/06

エレバン・クニーガとケルヴラン

エレバン・クニーガにおけるネイマンのパースペクティブは元素の融合進化を軸としたものであり、おそらく彼にとってケルヴランの元素転換説におけるフリタージュ、クリベージュの概念は派生的な現象と捉えていたようである。それではケルヴラン側からはどうだったのだろうか?

『地質学における微量エネルギー元素転換』の記述によると、ケルヴランとネイマンは一定の交流をもっており、ネイマンはケルヴランにエレバン・クニーガを送付している。しかしケルヴランはロシア語を読むことができなかったので、おそらくその内容をほとんど理解していないものと思われる。

ケルヴランはエレバン・クニーガに収録されているコロルコフの論文について言及しているが、これもネイマンやG・シューベルから得た情報を元にしているだけであり、論文の内容自体を精査しているわけではない。自らの元素転換説を補強するために役立つ情報をピックアップしているに過ぎない。

そもそもケルヴランの専門は労働医学であり、地質学に関しては全くの素人である。彼がその著作の中で披瀝している地質学の知識は、当時パリ大学の理学部でテキストとして使用されていたベライエとポメロルの共著『地質学の基礎』から引用されたものである。したがって彼の地質学の知識は大学生レベルのものであり、G・シューベルやネイマン、コロルコフの論文を評価する能力はないのである。

逆にいえば、ケルヴランの言葉の背後に何があるのかという問いを深めるうえで、エレバン・クニーガにはケルヴランの著作とは異なる重要性が存在するのである。

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