« 2014年4月 | トップページ | 2014年6月 »

2014/05/20

元素の融合進化

エレバン・クニーガは非常に専門的な研究内容がロシア語で記述されているので、解読はかなり困難な作業である。ただし、この論文集でネイマンが何を目指していたのかを暗示する一つの鍵が残されている。それは元素が融合進化するという独自の概念である。

現代科学における地球の起源は、超新星の爆発によって生じた鉄以降の金属元素を含む宇宙空間の岩石などが凝集して形成されたとされている。そして地球の形成過程では特殊なケースを除いて核反応が生じることはなく、各元素の存在量としてはほとんど変化していないと考えられている。

しかしネイマンは、なぜ特定の鉱物資源がランダムに分布するのではなく、ある地域に集中しているのかという根本的な疑問を抱いていた。そしてそれは単なる地理的要因ではなく、そのような鉱脈が形成される未知の環境条件が作用した結果ではないかと考えたのである。

こうして彼は、地球の形成過程において元素自体も多段階的な融合進化を行なってきたという独自の結論に達し、具体的に次のような反応がその進化の軸となっていると主張している。

N14→Si28→Fe56→Cd112→Ra224

この融合進化は原子量を基準にしているので、陽子の個数を示す原子番号とは一致しないことに注意してもらいたい。

まずステージ1では原始太陽系で窒素ガスが濃集し、珪素への転換が生じる。ステージ2では珪素やアルミニウムが鉄・ニッケル等に転換して地殻を構成する主要な元素が形成される。ステージ3では鉄・ニッケルなどの遷移元素が融合してカドミウムや銀などの微量元素が形成される。ステージ4ではそれらの元素がさらに融合してラジウムなどの放射性元素が作り出されることになる。

おそらくステージ1では派生的に酸素が形成され、それによってステージ2のアルミニウム等が派生的に形成されることになるのだろう。こうして地殻の87%を占める酸素、珪素、アルミニウム、鉄が原始の地球で形成されたとネイマンは考えたのである。

ネイマンは地球膨張論や地球結晶体説(惑星グリッド)にも深い関心を抱いていた。そしてこの元素の融合進化を軸として、それらとケルヴランの元素転換説を統一的に捉えようとしていたのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014/05/09

エレバン・クニーガ(4)

少しずつではあるが、ネイマンの論文集の概要が次第に明らかになりつつある。そこに収録されている論文は10人の科学者によるもので、各タイトルは以下のとおりである。

「自然界における元素転換-現在の研究状況と今後の課題について」(V・B・ネイマン)

「核融合と恒星のスペクトル型」(S・M・アイバザン)

「物質とエネルギーの進化における場の相互作用」(G・U・リフォシェストニー)

「真空場と物質の相関性に関する現代の見解」(B・A・ブーニン,Y・K・ディディク,Z・オグジェバスキー)

「化学元素の転換による岩石と鉱物の変成作用の実例」(P・A・コロルコフ)

「化学元素の動的バランス構造」(M・P・バスカコフ)

「地殻物質の変遷における溶融領域」(Y・D・マリノフスキー,V・B・ネイマン)

「熱拡散とマグマの結晶分化作用におけるその重要性」(A・T・ズベレフ)

まずこの論文集がなぜアルメニアの首都エレバンで出版されたかについてだが、二番目の著者のS・M・アイバザンがアルメニアの天文学者であることが関係しているようである。ちなみにヴィソツキー博士もインドのペンタゴンプレスから著作を出版しているが、これはドクターの友人の物理学者スリニバサンの計らいである。

また一つ注目すべき点は著者の一人のY・K・ディディクである。以前に紹介したことがあるが、ディディクはアスタフィーバとともに『原子構造と元素周期律の鏡像対称性』という著作の中でケルヴランやドクターの研究に言及している。元をたどるとネイマンとのつながりからそのような流れになっていたことは大きな発見といえるだろう。

そしてもう一つ重要なポイントは、このエレバン・クニーガはケルヴランの元素転換説に触発されて制作されたものではないという点である。モスクワ地球化学会議でG・シューベルが元素転換説を伝えたのは1971年7月だが、この論文集が出版されたのは1971年1月である。また収録されている論文を概観するかぎり、ケルヴランを引用している個所は見当たらない。

元素転換説に依拠することなくこのような論文集をまとめたということは、そこにはケルヴランとは異なるパースペクティブが存在するということである。その点を踏まえた上で彼らの眼差を追ってみたいと考えている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2014年4月 | トップページ | 2014年6月 »