フリタージュと陶磁器
Frittage という言葉をフランス語の辞書で調べると「ガラスの溶融・陶器の焼結」などと記している。決して元素転換説でいうところの「核子クラスターの結合」などという表現は出てこない。
英語と発音は異なるが、フランス語には核融合・核分裂を示す言葉として、fusion, fission があるが、ケルヴランはなぜか初期の論文から frittage, clivage を使用している。このことはずっと不思議に思っていたが、最近になってその理由が明らかになってきた。
そのヒントは陶芸に関する一つの記事だった。陶磁器の焼き方にはいくつかの方法があるという。その一つは「酸化焼成」で炉内に十分な酸素を含んだ状態で陶器を焼きあげるそうである。またその反対に「還元焼成」というものもあり、表面に炭素を定着させる「炭化焼成」という技法も存在する。
ケルヴランは当初、核反応と化学反応の中間的なエネルギー・レベルで元素転換反応が生じるものと考えていた。そして酸化・還元・炭化という焼成方法は酸素・水素・炭素という核子クラスターの結合に比定しうるものと考えたのではないだろうか。
奇しくもケルヴランの出身地であるブルターニュ地方のカンペールでは「カンペール焼き」という陶磁器が作られているという。ケルト文明などの郷土史にも精通していたケルヴランがそこからヒントを得た可能性は十分にあるだろう。
現代の私たちは元素転換反応を特殊な核融合の一種と考えようとしがちだが、ケルヴランはそれをより多様なプロセスをもつ作用と捉えていたようである。
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