隕石とフリタージュ
先月ロシアで隕石が落下し、世界中のメディアで大きな注目を集めた。隕石の本体は見つかっていないようだが、発見された破片によると石質隕石の一つと考えられている。このニュースから思い出したので、私の持っている「隕石」を紹介したい。
一つはスイスのナイフメーカー、クロッツリが限定製作した<スペース・ナイフ>というものである。ハンドルはチタン製だが、ブレードは地球上には存在しない金属、オクタヘドライトでできている。
このオクタヘドライトは一部の鉄隕石に含まれている特殊な鉱物で、表面にウィドマンシュテッテン模様という幾何学的パターンが浮かび上がっているのが特徴である。この模様はオクタヘドライトの特殊な結晶構造を反映しているという。
通常ナイフのブレードは鋼材を熱処理することによって硬度を調整している。鉄隕石は火星と木星の間にあった小惑星が爆発し、それが何百万年もかけて冷却されたことによってオクタヘドライトのような特殊な鉱物が形成されたものと考えられている。それが隕石として地球に落下したわけだから二度の熱処理を受けていることになるが、そのわりには比較的研磨しやすい硬度になっている。
もう一つはモルダバイトという隕石のペンダントだが、これは半透明の緑色の鉱物である。外観は翡翠に近いと思われるが、モルダバイトという名称はスメタナの交響曲でも知られるモルダウ川流域で発見されたことに由来するらしい。
このモルダバイトは実は隕石と呼べるものかどうかははっきりしない。隕石が地表の岩石と激突したときに衝撃変成作用で形成されたのではないかと考えられているが、正確な成因は不明らしい。
G・シューベルはこのような鉱物はR.N.N.T.による元素転換反応によって生成したのではないかと述べているが、そのような可能性を含めて形成プロセスを検討してみると新しい発見があるかもしれない。
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