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2012/10/25

真実は眠る

<Rical>から送られたJ・M・ガセロンのファイルを少しずつ解読している。それはケルヴランと同じ時代に元素転換の研究を行なっていたP・バランジェに関する資料である。

『フリタージュの真実』にはP・バランジェの研究を紹介した『S&V』の記事を収録しているが、フリタージュに関するバランジェの資料はこれが唯一といってよい。ケルヴランが9冊の著作と数多くの論文を公表しているのに対し、バランジェは有機化学に関する著書はあるものの、元素転換に関する論文はわずか一本だけである。

バランジェの研究実態については多くの謎が残されているが、その一端を照射する資料が生前のバランジェと交流のあったガセロンの著作である。その第3章のタイトルは「P・バランジェとアカデミー」となっているが、これによるとバランジェはフランス科学アカデミーに論文を提出したが、その公表を拒否され、また農学アカデミーでも二度にわたって同様の扱いを受けたらしい。

『フリタージュの真実』では、バランジェの実験を検証したとされるスービエ・ガデ論文がステファーヌ・エニンによって紹介されているが、ガセロンによるとL・スービエは1960年1月にバランジェに対して意見書を送付しており、セルダーニュ・ベッチによるカリウムの元素転換は実験的に確認できなかったと述べている。

するとバランジェはそれ以前(すなわちケルヴランが最初の論文を公表した1960年7月以前)に元素転換に関する実験を公表し、スービエはエニンが公表した論文の記述以前にバランジェの実験を検証していたことになる。

パリ理工科学校の有機化学研究所所長のバランジェがなぜ元素転換の研究を行なったのかは不明な点ではあるが、バランジェはガンやハンセン病の化学療法の研究も行なっていた。それに関連して植物の薬効成分にも関心があり、その含有量がなぜ特定の品種や地域によって変動するのかという疑問を抱いていた可能性がある。つまりアレロパシーでいうところの生理活性物質の生成要因が元素転換ではないかと考えていたのかもしれない。

いずれにしろ真実はまだ深い闇の中にあるが、ケルヴランとは異なるバランジェのアプローチが少しずつ明らかになってゆくに違いない。

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2012/10/12

アレロパシー仮説

人体に共存するマイクロバイオームもとても興味深いが、動物だけではなく植物にもそのような共生ネットワークが存在する。よく知られているのは窒素を固定する根粒菌だが、キノコ類のように外生菌根を通じて養分を交換しするシステムをもつ植物も多い。

このような植物と微生物との共生ネットワークは断片的に解明されつつあるが、どちらかというと植物自体は受動的な役割を担っているように見える。しかしアレロパシー仮説というものによると、植物はその進化の過程でむしろ能動的かつ支配的な生存活動を行なってきたらしい。

アレロパシーとは他感作用と呼ばれ、植物が化学物質を作り出すことによって昆虫や微生物を含む生態系に働きかける現象をさす言葉である。森林浴で知られるフィトンチッドもその一つであり、コーヒーのカフェインやタバコのニコチン、漢方薬の薬効成分やフラボノイドもそのような生理活性物質であるという。

こうした成分は人間社会では抽出利用されているが、興味深いことにそれぞれの植物の生存維持には直接必要のないものとされている。そのため植物生理学上は二次代謝物質としてあまり重要視されていなかったが、進化のプロセスや微生物との共生関係のために何らかの役割を果たしているものと考えられている。

植物の有効成分を利用したケモセラピーやホメオパシーによる治療をアレロパシー仮説から捉えなおすと、それらは間接的には治療が必要とされる動物系のマイクロバイオームに対するアプローチといえるのかもしれない。

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