マイクロバイオーム
『日経サイエンス』10月号には「マイクロバイオーム」と題する特集記事が掲載されている。マイクロバイオームとはあまり聞きなれない名称だが、人体に共存する常在菌組織をさし、特にヒトゲノムに対する対置的用語として使用されているようである。
よく耳にする腸内細菌や腸内フローラもその一部であり、これらは嫌気性微生物のため単離培養して研究することは難しい。しかし遺伝子配列を解読する高速シーケンサーを活用して、現在「ヒューマン・マイクロバイオーム計画」が進められているという。これにより様々な興味深い知見が明らかにされている。
その一つとしては、ヒトゲノムに含まれる遺伝子が最大25000個程度なのに対して、マイクロバイオームのDNAは実に330万個に相当するということである。私たちの体をパソコンにたとえると基本ソフトやプログラムがヒトゲノムといえるが、外部からダウンロードされたアプリケーションとしてのマイクロバイオームはその約150倍も存在するということである。そしてそのおかげで私たちはビタミンを合成したり、本来は消化できなかった食物を分解する酵素を作り出せるように「共生進化」を遂げているというのである。
このような研究の進展は腸内細菌のバランスや免疫機能の解明にもつながってゆくだろうが、フリタージュの観点からみても興味深い。生体組織の中で元素転換が生じるなら、そのプロセスを担当する遺伝子が存在するはずだが、それはその生物本来のDNAではなく、共生するマイクロバイオームがアプリケーションになっているのかもしれない。
これからの人類の健康と「共生進化」においては、このマイクロバイオームのネットワークが一つの鍵をにぎっているのかもしれない。
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