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2012/03/30

フリタージュ会議

新作をリリースして一か月余りが過ぎようとしているが、予想外の反響にわれながら驚いている。難解かつ高価な研究書なので5冊も売れるかどうかと思っていたが、すでに20冊以上の注文を頂いている。

フリタージュ・ブックスが売れるのは確かにありがたいことではあるのだが、少し懸念されるところもある。それは注文された読者の方が求めるものと著作の内容の適合性である。

『生物学的元素転換』は元素転換説の入門書であり、そこから興味を深めた方は『地質学における微量エネルギー元素転換』や『フリタージュの真実』に進まれるのは良いと思う。後者にはヴィソツキー博士の研究も紹介されているので一つのステップにはなるだろうが、それを踏まえても今回の新作は難解に感じられるだろう。そのフォローの意味合いもあって、これまでのブログでも解説してきたわけである。

その締めくくりとして収録されている論文と特許資料について付言しておきたい。キエフ・グループがこれまでに公表した論文はICCFや『インフィニット・エナジー』に掲載されたものなどが存在するが、その多くは相互に重複した内容を含んでいる。そこで原書には収録されていないMCTに関連するものを付録として選別している。

Ru2 また彼らの特許資料はアブストラクトを除いて全てロシア語であり、比較的初期の研究に基づくものである。そのためあえて収録する必要はないと考えていたが、ヴィソツキー博士から特別に許可が得られたので参考資料として掲載している。ちなみにその最後のページにはちょっとしたサプライズを仕込んでいるが、これは昨年の年末にドクターから送付されたものである。

そして今年の9月には久しぶりにヴィソツキー博士が来日される。詳細な日程はまだ未定だが、新作の読者の方々とささやかな会合を開きたいと構想しているところである。いわば国内における「第1回フリタージュ会議」である。そのときにはドクターに直接質問することができると思うので、今から余念なく「予習」しておいて頂きたい。

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2012/03/22

「一年前」と「一年後」

東日本大震災から一年を迎えた3月11日、しかるべく予想されたように各局は震災報道一色だった。その翌朝、携帯にはヴィソツキー博士からのメールが届いていた。

"Dear Taka, I wish to extend to you my sincere sympathy in one year of Fukushima tragedy."

放射線物理学者としてチェルノブイリ原発事故を体験したヴィソツキー博士は、放射能汚染の危険と恐怖を身をもって知っている。そのメールの内容は短いものだったが、冗長かつかしましい特番報道よりはるかに深く心に響いた。

そして新作の第7章の記述も、福島の原発事故を体験した私たちにとってきわめて印象深く、また重い響きをもつ内容である。そこには使用済み核燃料や様々な放射性廃棄物の問題が実に多面的に検討されており、その問題の多くはいまだ解決困難な状況にあることを雄弁に物語っている。

彼らの研究に関心をもつ人の中には、フリタージュ反応が生物学における常温核融合であり、MCTを散布すればたちどころに放射能が消滅するようにとらえている人もいるようだが、それはあまりにも皮相的な認識である。

MCTのベースとなっているのはタシレフ博士のRMMテクノロジーであり、微生物と金属元素の立体化学的な相互作用が基本的な前提となっている。核合成反応はそれに基づいた特殊な生化学的プロセスであり、いわば生物と非生物との界面現象といえるだろう。

真の復興に向けて目先の問題を解決していくことも必要だが、震災から一年を迎えた今、次の段階に向けて彼らの技術的実用化を目的とした計画を進めていく必要があると感じている。

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2012/03/08

生物の進化とフリタージュ

新作の第6章はフリタージュ反応の生化学的側面をテーマとしているが、その内容もまた第5章とは異なる難解さが感じられる。

まずその前提条件として、生物組織はDNAの複製プロセスと細胞分裂を基本とする代謝作用を通して、その固有の組成や構造を忠実に復元しようとする存在であることを再認識する必要がある。そしてそれはアミノ酸や蛋白質の合成といった分子レベルのみならず、原子レベルにまで及ぶ問題である。

たとえば水素や酸素、炭素、窒素などは生体組織に不可欠な必須元素として知られている。また比率的には少ないが重要な役割を果たす元素として鉄やマグネシウムなどがあり、それ以外にも酵素の触媒となるマンガンなどの微量元素が代謝活動に必要とされている。

このような各元素とそれらが使用される生体プロセスは生物固有のDNAによって決定されている。ところがそれぞれの生物の外的環境は変動しやすく、必ずしも必要とされる元素をバランスよく吸収できるとは限らない。そのような環境条件に対する適応の必要性が生物の進化の原動力ともなったのである。

こうした理解に基づいて生物に対する元素転換プロセスの意義というものを考察してみると、それは環境条件に対する適応能力の一つであり、また正常な代謝活動を維持するための特殊な反応と考えることができるだろう。さらに生物固有の進化過程において一定の役割を果たしたものと推測される。

この生物の進化という巨視的な観点と、細胞やDNAレベルの反応という微視的観点の両方の視点から、フリタージュの生化学的要因は追究されなくてはならないのである。

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2012/03/02

常温核融合とフリタージュ

新作の第5章のタイトルは「生体系における同位体の元素転換プロセスの物理的側面」というものだが、その冒頭ではいわゆる常温核融合の研究の沿革について記されており、ヴィソツキー博士は物理学者として、その文脈の中で元素転換プロセスに対するアプローチの姿勢を示している。

私個人としてはコールド・フュージョンとフリタージュ反応を区別して捉えるべきものと考えている。その理由として、常温核融合は物理化学的な実験材料を使用するものが大半を占めるのに対し、元素転換は生物組織の代謝環境がベースになっている。それゆえ、たとえ反応に関与する元素が共通していても、その熱力学的プロセスやエネルギー的条件は大きく異なっている。したがって両者の作用メカニズムもおそらくは異なるものであり、研究上の相互理解を深めることにつながらないからである。

そのような意味で私は常温核融合と元素転換を区分すべきと考えているが、ヴィソツキー博士は量子レベルにおいて両者に共通するメカニズムが存在しうるものと考えている。第5章の立論はこのような前提に基づいて展開されている。

その内容はかなり専門的であり、量子力学を学んだ人にとっても難解かもしれない。私自身も英文では理解できない所はロシア語を調べ、それでも難解な部分は量子力学の専門書をひもとき、ヴィソツキー博士に質問を重ねてようやく完成させた経緯がある。もしかするとあまりに難解すぎて概念的にも理解できない方がおられるかもしれないが、現代の量子力学の枠組みの中でフリタージュ反応を理解する一つのアプローチととらえて頂きたい。

こうした研究は放射線被曝の問題と類似しているのかもしれない。高線量被曝の影響はかなり明確に理解されているが、低線量被曝の実態に関してはLNTやホルミシス仮説のように明確にはなっていない。それと同様に、高エネルギーの熱核融合に適用される理論は必ずしも低エネルギーの相互作用を完全に説明するものとは限らないのである。

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