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2011/12/22

新書完訳

キエフ・グループの研究書『生体系における同位体の元素転換と核融合』の翻訳がようやく完了した。今後は校正と編集作業を行ない、出版の準備を進めることになるだろう。すでに部分的な作業は行なっているが、この年末年始にかけて全体的なオペを行なう予定である。

この本がリリースされたのは2003年7月だが、私はその少し前に彼らの研究のことを知ったばかりだった。当時はまだ『生物学的元素転換』も完成していなかったが、京都大学の会合で知りあったある教授から「放射性元素の転換を研究をしている人物がいる」という話を聞いたのがきっかけだった。

ところがどこの誰なのかは教えてもらわなかったので、その後しばらくはその情報も忘れかけていた。やがてICCFに関するサイトを知るようになって、ようやくヴィソツキー博士の論文にたどり着いたのである。

2004年頃にはヴィソツキー博士とメールのやりとりをするようになり、その著作を入手して翻訳を開始したのが平成16年1月20日である。そうするとこの翻訳を完成するのに8年間かかっている計算になる。

8年は長いと思われるかもしれないが、この期間には『生物学的元素転換』、『地質学における微量エネルギー元素転換』、『フリタージュの真実』、『MRETウォーター』という4冊のフリタージュ・ブックスを完成させる作業を延々と行なってきた。それに加えて今回の翻訳作業も続けていたという経緯がある。

実をいうと私は、この本の翻訳はかなり困難だと考え、全く別の本を制作する予定だった。各章を分割して実験データをメインとする論文集として再構成しようと考えていたのである。ところが、そのように作業を進めていくうちに、各章の内容がかなり関連性をもっていて分割することが難しいことがわかってきた。そこで翻訳作業の量を3倍に増やして全体を完訳する方向にシフトしたのである。

そのために内容的にかなり高度な専門書になってしまったが、そこに彼らの研究の真価を見出していただければ幸いである。

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2011/12/14

ケルヴランに消された男

先日<Rical>から連絡があり、フランス国立図書館に依頼していたPDFファイルが届いたとのことなので、<Rical>のサイトからダウンロードさせてもらった。これまでいくつか資料を照会したことはあったが見つかることはなかったので、久しぶりの収穫といえる。

そのファイルは『植物は元素転換を行なうか?』というJ・M・ガセロンによるバランジェの評伝と呼べるものだが、なかなか興味深い内容である。

ケルヴランとほぼ同時期に元素転換に関する研究を行なっていたバランジェだが、ケルヴランが9冊の著作を残しているのに対し、バランジェの著作や論文はごくわずかしか確認されていない。しかもそのほとんどは専門の有機化学に関する概論であり、元素転換に関する記述はほぼ含まれていないだろう。

だがこのファイルを見るとバランジェがかなり本格的に研究していたことがよくわかる。ケルヴランの著作ではほとんど見られない統計処理に基づいたデータも掲載されているからである。

私にとって興味深いのは第3章の「ピエール・バランジェとアカデミー」である。この章にはフランス科学アカデミー、フランス農学アカデミーとの関連が描かれているが、ケルヴランに対して反証実験を示したL・スービエ、R・ガデ、そしてステファーヌ・エニンの名前も見られる。

おそらく<異端審問>の裏側でバランジェは一定の役割を果たしていたのではないだろうか。そのように考えると、アカデミーのメンバーのほとんどもバランジェに対する認識を伺わせるような発言をしているようにも思われる。バランジェは有機化学研究所の所長という確固とした地位にいたので、アカデミーのメンバーも公然とは批判しにくい面があったのかもしれない。そしてその牽制としてケルヴランに矛先が向いたとは考えられないだろうか。

フリタージュの歴史においてはケルヴランに消された形になっているバランジェが、もしかすると意外な存在感をもっていたとも考えられる。しばらく英語とロシア語ばかり翻訳していたが、久しぶりにフランス語の腕を磨きなおす良い機会かもしれない。

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2011/12/06

放射能を消去する実験モデル

放射性物質で汚染された土地では除染作業が行なわれているという。だが問題はその作業によって除去されたセシウムを含む土壌の処分である。

私が政治権力をもっていたら、イージス艦の護衛の下に放射能を含むがれきや汚染土を尖閣諸島に移送させるだろう。これにはおそらく中国が阻止しようとするだろうが、被災地復興と国民の安全のためである。もし中国が強硬手段に訴えようとするなら、その場で汚染土を海洋投棄させる。

政局にうつつを抜かしている今の政権ではこのようなことは実現できないだろう。そこで放射能を消去するための具体的な実験モデルを提起したい。

C36_bor キエフ・グループがMCTを使用して行なった実験のデータを再確認してみることにしよう。このグラフでは培養基にカルシウムを加えたときに最も効率的なフリタージュ反応が生じ、通常の35倍の速度で放射能が減衰している。しかしこのグラフから読み取れることはそれだけではない。

奇妙に思われるかもしれないが、培養基にカリウムやナトリウムなどのアルカリ金属を加えたときには、何も加えていないときより反応効率が下がっているのである。つまりMCTはセシウムをカリウムの生化学的代替物として利用しているので、カリウムが豊富な環境ではセシウムを吸収する必要がなくなるのである。

ヒマワリがあまりセシウムを吸収しなかったという話もおそらく同じ理由だろう。土壌にカリウムが豊富にあれば、わざわざセシウムを吸収する必要はないからである。

こうした観点からいうと、セシウムを含む土壌からまずカリウムを除去することが望ましい。そのような前処理をしたあとにフリタージュ反応を生じる微生物にセシウムを吸収させるべきである。

使用される微生物としては実績のあるMCTが望ましいが、現段階での入手は困難である。そこでいくつか有力な候補を上げるとすれば、放射能耐性菌のマイクロコッカス・ラジオデュランスやディノコッカス・ラジオデュランス、また酵母の一種であるサッカロミセス・セレヴィシエT-8、バチルス・サブティリスGSY228が有望だろう。さらにエシェリチア・コリK-1やアゾトバクター・クロコッカムも試してみる価値はある。これらは全てフリタージュ反応を生じることがキエフ・グループの実験で確認されているからである。

これらの微生物は実験用菌体を提供している国内の業者から入手することが可能と思われる。汚染土を30年以上も保管しておくしかないのであれば、このような実験的アプローチを試みてもよいのではないだろうか。

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