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2010/12/22

ガラス細工の地球

『生物学的元素転換』、『フリタージュの真実』、そして今回の『地質学における微量エネルギー元素転換』が完成したことで、ケルヴランに関するフリタージュ・ブックス三部作が完成したことになる。これを一つのステップとして来年からは新しい活動を展開することになるだろう。

今回の著作の中でケルヴラン自身はあまり触れていないが、フリタージュの観点から地球の形成過程を考察してみることも興味深いと思う。

教科書やNHKの番組などでは原初の太陽系で岩石や塵が衝突し、重力的にまとまることで地球が形成されたというストーリーがよく語られている。しかし本当にそのような粗雑なプロセスでこれほどきれいな惑星が生み出されるのだろうか?

たとえば土星の輪を考えてみよう。美しい縞模様を作り出している輪の成分は無数の岩石や氷だといわれている。ではその氷や岩石が衝突して一つの衛星になると考えられるだろうか?もしそうだとすれば、土星の衛星はなぜ輪と離れた位置に軌道を描いているのだろう?

おそらく超新星の残骸を取り込まないと重い元素の存在を説明できないから岩石の衝突などを持ち出しているのだろうが、金やプラチナ、ウランなどの成因は超新星の爆発でも説明できないという。

ケルヴランの考え方はそれとは全く異なっている。まず原始太陽雲で濃集した水素やヘリウムから窒素などの軽い元素が作られ、その窒素が珪素に転換する。これが原始の地球の主成分となる。

そして炎で溶けたガラス細工のような地球の中で少しずつ変化が生じはじめる。その表層部では珪素からアルミニウムへの転換が始まり、花崗岩に近い岩石へと変容していく。これが後の大陸地殻の構成成分となる。

一方、数十kmの地下深部では珪素からマグネシウムへの転換が進行し、玄武岩質の鉱物組成へと変わってゆく。これはその後の海洋地殻を形成するものである。さらにそれより深い地中内部では珪素から鉄へのフリタージュが生じ、そこからより重い金属元素の生成へとつながっていくのである。

つまり大陸地殻ではSi→Al、海洋地殻ではSi→Mg、マントルではSi→Feという元素転換が生じ、その後の地球化学的な進化の節目になったとケルヴランは考えていたのである。そしてこれらの反応を主軸として、水素や酸素を核子クラスターとする反応が枝分かれ的に進行していくことはいうまでもない。

ガラス細工の地球とは一見幻想的なイメージだが、珪素は地球上で二番目に多い元素でもある。このような観点から今回の著作を楽しんで頂きたいものである。

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2010/12/10

失われたテーゼ

『地質学における微量エネルギー元素転換』の完成品がようやく届いた。すでに予約されている方には順次発送する予定なので楽しみにお待ち頂きたい。

Dec10174 本書で語られるところの地質学におけるフリタージュ現象の可能性は、すでに忘れさられた研究テーマといってもよいだろう。生物学的元素転換は多くの科学者による論争と様々な反響を引き起こし、現在でもフランスのJ・P・ビベリアン博士やキエフ・グループのようにその実在の検証を進めている研究者が存在する。

ところがこの微量エネルギー元素転換は1970年代にロシアの科学者たちに広範な影響を与えたものの、現在この研究を専門的に行なっている科学者は私の知るかぎり皆無に等しい。

もっともそれに関心を寄せる研究者はいないわけではない。E・M・アスタフィーバはその著作の一章を「微量エネルギー元素転換の理論的根拠」と題し、その実例としてクールスクの磁気異常を上げている。これは珪酸岩に含まれる鉄分がその原因と見られている。またコールド・フュージョン系でも直接的な関連性を示すものは少ないが、P・グランディクスの研究などは個人的に興味深いと感じている。

ちなみに『生物学的元素転換』には元素転換の回路の一つとして<メタル・ループ>というものが提示されているが、その図式をうのみにして分かったつもりになっている人は本書を読まないほうが良いだろう。現実に存在する岩石は多様な結晶構造をもつ鉱物から構成されており、それぞれの系列における化学的な制約条件が存在しているからである。

地質学全般に詳しくないという方は、まず最寄りの書店で地学の参考書を求めるなりしてから本書に取り組まれることをお勧めする。そうすればこの「失われたテーゼ」から新たな知見を得ることができるに違いない。

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2010/12/02

『地質学における微量エネルギー元素転換』

『地質学における微量エネルギー元素転換』がいよいよ今月に完成する。そこでこの著作を再制作した経緯をここで改めて確認しておきたい。

Nov25168 この本の原書はケルヴランの1973年の著作『微量エネルギー元素転換の地質学と物理学における証明』というもので、2005年6月に私は同じタイトルの翻訳書を作成している。ワープロとコピーで制作したプロトタイプと呼べるものだが、それでも多くの方にお求め頂いたことには感謝している。

その後何度か再制作しようとしたのだがなかなか条件的に難しく、また『フリタージュの真実』を制作する構想が進むにつれていったん断念せざるをえなかった。『MRETウォーター』や『生物学的元素転換』の新版を制作する間にも少しずつ手を加えていたが、その作業に専念できるようになったのは今年の夏以降である。

当初私はその制作をわりと安易に考えていた。テキストファイルをWORDに変換し、グラフや図をスキャナーで読みこめば簡単にできるだろうと。しかし山の頂上を麓から仰ぎ見るのと、実際にその頂点を目ざして歩き続けることには雲泥の開きがある。

翻訳自体はすでに完成していたわけだが、ケルヴランはこの本に収録されている資料の大半をG・シューベルから提供を受けている。そのために難解な表現になっている部分も多かったので、私はG・シューベルの論文の翻訳も平行して進めていた。そのような迂回をへて初めて明確になった部分も多い。

また図やグラフも原書に収録されているものとワープロで作成したものがあったが、今回は内容の理解にもっともふさわしいものとして要所に応じて原書版とワープロ版を使い分けている。さらにケルヴランの他の著作やG・シューベルの論文に掲載されている図表、私が独自に作成したイラストも収録しているので、5年前に翻訳書を購入された方にも新しい発見があることだろう。

私にとっては今年最後の大仕事だが、来週末には完成品が届く見通しである。今回の制作部数は30部だか、すでに予約されている方もいるので残りは27部になる。あまり宣伝めいたことを言うつもりはないが、関心をお持ちの方は早めに確保して頂ければ幸いである。

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