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2010/09/29

地質現象と核反応

ケルヴランの7冊目の著作を翻訳した『微量エネルギー元素転換の地質学と物理学における証明』が完売して久しい。すでに数人の方からご予約頂いているが、現在はそのオンデマンド版として『地質学における微量エネルギー元素転換』の制作を進めている。

基本的な内容は前作とほぼ同一だが、新たに全体を校正した上で図表やグラフも再作成し、より理解しやすいものに仕上げるための作業を進めている。今年は『生物学的元素転換』の新版を完成させたので、リリースは来春以降になる予定である。

この著作においてケルヴランはその内容の多くを地質学者G・シューベルからの資料や情報に依存している。したがって本書ではケルヴランよりもむしろG・シューベルの視点が重要なキーポイントになっている。

G・シューベルに関しては『フリタージュの真実』にもたびたび登場しているが、ケルヴランが元素転換説を公表する以前の1952年に「花崗岩化作用と原子核物理学」という論文の中で珪酸岩が花崗岩に相転移するという<原子核パリンジェネシス仮説>を提唱している。

もっともそれ以前に地質現象と核反応の関連性を検討した科学者がいなかったわけではない。J・ネツリンは1940年に「火山活動と核化学」という論文を公表し、N・エフレモフは1948年にあらゆる鉱物元素がマグネシウムから派生したという大胆な仮説を提唱している。

またG・シューベルの兄のB・シューベルも同じ地質学者としてこの問題に着目し、地質時代の変遷を通じてマグネシウムがアルミニウムに変化したのではないかと述べている。ジョルジュ・シューベルの原子核パリンジェネシス仮説はこのような兄のボリス・シューベルの所説からも影響を受けているようである。

やがてそれはケルヴランとの共同実験を経てR.N.N.T.(自然核反応)という独創的な概念につながっていくわけだが、『地質学における微量エネルギー元素転換』においてはそのあたりの文脈まで照準をすえたいと考えている。

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2010/09/13

無肥料栽培とフリタージュ

先週のことだが、『生物学的元素転換』を注文された方から連絡があり、近くなので直接会って話がしたいとのことだった。そこで指定された場所を訪れると三人の方が待たれていた。

話を聞くと、彼らは無肥料・無農薬のりんご栽培で知られる木村秋則氏の栽培方法に関心を抱き、岡山県で木村式自然栽培を普及させようとする団体に参加しているという。(http://www.oka-kimurashiki.jp) そして無肥料栽培についていろいろと調べていくうちにケルヴランの元素転換説を知って本を注文したとのことだった。

『生物学的元素転換』には農業に関連する内容も記述されているが、実際の栽培技術についてのノウハウを記したものではない。あくまで元素転換説に関する基本的な入門書である。そのことを説明した上で本の購入を決めて頂いた。

木村氏のりんご栽培については私も以前NHKの番組を観たことがあるが、いま非常に注目を浴びており、各県でその自然栽培を導入しようとする動きがあるようである。だが無肥料栽培がどうして可能になるのかについては、まだ科学的に解明されているとはいえない。

生物学的元素転換がそこにどのように関与しているかは不明だが、私個人の見解としては、植物に不足している養分を微生物が土壌の無機元素から直接的に元素転換しているという考え方には無理があると思う。

むしろ養分の欠乏した植物-微生物の共生ネットワークは、それまで「食べられなかった」土壌中の不溶性成分を「食べられる」可溶性成分に変化させて分解・吸収するために新しい酵素の合成を行なうようになる。しかしそうした酵素が活性化するにはマンガンなどの微量元素や金属イオンが触媒として必要になる。そこで微量ながら必要とされる元素を作り出すためにフリタージュ反応が生じるとは考えられないだろうか。

木村氏のりんご栽培をはじめとして福岡農法など様々な無肥料栽培があるが、その鍵を握るのは酵素反応の触媒となる微量元素の存在なのかもしれない。

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2010/09/02

マリオバクターのオマージュ

ホレマン教授のサイトの<Holleman research>には、J・P・ビベリアン博士が2003年10月に行なった元素転換実験が紹介されている。この実験はホレマン教授の逝去後に創設されたホレマン協会の資金協力の下に実施されたものらしい。

それによるとビベリアン博士は、マリノバクター(DSM11874)と呼ばれる海洋微生物をフラスコ内で培養することによって数種類の元素の変動を観察したという。しかも同じ条件で培養したにも関らず、あるフラスコではそれぞれの元素が増加しており、別のフラスコではそれらの元素は減少しているという対照的な変動を生じたというのである。

もしこれが事実とすれば、マリノバクターはフリタージュとクリベージュの反応を双方向的に生じることができる極めて特殊な微生物ということになる。ちなみにこのマリノバクターは実験に協力したメディテラン大学の微生物学者、ヴァレリー・ミコティー博士が精通していることから採用されたという。

ここで気になるのは、それぞれのフラスコの増減に対する変動、つまりケルヴランでいうところのノン・ゼロ・バランスが明確に示されていない点である。これではそこにどのような元素転換が生じたのかを確定することはできない。

この実験の問題点はおそらく培養液として使用されたASW(人工海水)にあるのではないだろうか。海水に近い組成にするために様々な物質を混合したため、各フラスコの組成分析にも平均10%の格差を生じている。これではマリノバクターによる変動への影響は避けられない。

結果的に何らかの変動が培養によって生じたことは否定できないが、それがどのようなプロセスで生じたものかは見えてこない。ビベリアン博士のこの実験は、クロレラによる元素転換を再現しようとしたホレマン教授にとっても満たされないオマージュになっているように思われる。

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