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2010/06/21

Qui est Rical ?

情報確認のために検索しているとフランスのウィキペディアに興味深い記述を見つけた。(http://fr.wikibooks.org/wiki/Une_histoire_des_Transmutations_Biologiques)

この文章はもともとケルヴランに関連する内容としてアップロードされたものらしいが、いくつかの批判を受けたために別項目としてまとめられたものらしい。フランス語を読めない人に詳細はわからないかもしれないが、フリタージュの研究の沿革として実にみごとな出来映えである。誤りがあれば訂正しようとひととおり目を通してみたが、まったく非の打ち所のない内容だった。

この文章を執筆したのは<Rical>という人物のようだが、フリタージュに関連する人間はほとんど知っている私にも心当たりはない。ドイツでケルヴランのサイトを制作しているヘルムートはフランス語が読めないし、レオン・ゲゲンがこのような文章を書くはずもない。またビベリアン博士にしては研究の引用の仕方が不自然である。

この<Rical>がどのような人物かは不明だが、R・ハウシュカやK・ヴォルカマーなど私が詳しく知らない研究も引用されている。ケルヴランの資料に関しては私がヘルムートに伝えた『フリタージュの真実』の関連文献を参考にしているようである。また私のサイトを訪れたことがあるらしく、トップページのケルヴランの記事の内容を正確に引用している。

この記事はプラネートの別冊『この知られざる大地』に収録されているものだが、<Rical>がそれを知らないということは私が提示している関連文献に目を通していないということである。その証拠にP・バランジェに関する記述も乏しい。

しかしそのあたりをフォローしていけば十分読みごたえのある内容になるだろう。いずれ時間ができればこのような研究の歴史を一つのストーリーにまとめてみたいものである。

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2010/06/04

遺伝子の暗黒領域

前回の話は少し専門的な内容だったが、フリタージュのメカニズムに関してきわめて重要な部分が含まれている。サイクリックcAMPも興味深い研究テーマだが、やはり基本となるのはそれを生み出す遺伝子のメカニズムである。

『フリタージュの真実』にも記しているように、グルコースを主食とする大腸菌はたとえ他の多糖類が豊富にある環境でも通常はグルコースしか摂取しない。これはグルコースを吸収することが大腸菌にとって最も代謝効率が良いからである。アミラーゼやプロテアーゼといった酵素に基質特異性があるように、この特質はカタボライト・リプレッション(異化代謝物産生抑制)と呼ばれている。

しかし大腸菌はグルコース以外の糖類を摂取できないわけではない。極端にグルコースの量が減少すると今度はラクトースなどを分解吸収するようになる。これはグルコースの欠乏を感知した大腸菌のオペレーター遺伝子が作動してラクトースを分解する酵素を合成したためである。

つまり大腸菌の遺伝子プログラムの中にはもともとラクトースを消化吸収するためのアプリケーションがプレ・インストールされており、生命の危険がせまったときに初めて発動するようになっている。それはまるで極限状態の人間がしぼり出す「火事場の馬鹿力」のようなものである。

ケルヴランが生体内で元素転換を生じるメカニズムとして提示したのもこのような遺伝子プログラムだった。サハラ砂漠の油田労働者や石灰分の欠乏した鶏の中で生じたのは生命の危機に対する緊急プログラムであり、フリタージュ反応はその結果に過ぎないというのである。

環境条件によって遺伝子プログラムが発動するという実例は様々な分野で観察されている。たとえば不耕起栽培において硬い土壌に植えた植物の根が「野生化する」という現象はよく知られている。また半日断食を推奨する甲田療法では、断食によって難病が治癒されるのは栄養分の欠乏による遺伝子プログラムの発動が関与していることを示唆している。

ただし、こうした遺伝子プログラムの発動は現代の遺伝子治療とは区別して考えなければならない。前者は自然な状態で生命のポテンシャル・エネルギーを引き出そうとするものだが、後者は遺伝子プログラムを人工的に改変ないし無効にすることによって病気を治療しようとするものである。

遺伝子治療は病気の原因を遺伝子レベルで除去しようとする一見理想的なものだが、実は恐るべき危険性を孕んでいる。遺伝子というものは一つの役割だけを担っているのではない。一つの遺伝子が他の生体機能に深く関与していることも明らかにされている。筑波大学の村上教授の『生命の暗号』によると、血圧を下げるホルモンに関連する遺伝子を操作したマウスは骨の形成異常や腎不全を生じて死亡するという。

私たちは機械が故障すると、その故障した部分を特定してパーツを交換することで修理しようとする。だが、生命体の場合はそのような機械論的なアプローチが適用できる領域はごくわずかである。

まるでルービックキューブの一面だけをそろえようとすると、別の面が崩れていくのと同じように、一つの遺伝子をいじると予想外の結果を引き起こすことになる。遺伝子治療とかゲノム製薬というと聞こえはいいが、実際には深い闇をさまよいながらグロテスクな実験を繰り返している実態がそこにはある。

すでに遺伝子操作された作物が生産され、私たちの身近なものにもなってきているが、これからのエコロジーは単なるリサイクルごっこではなく、遺伝子レベルまで考慮しなければならない時代になっているのである。

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