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2010/03/26

微生物・金属・細胞

前回までRMMテクノロジーの概要について述べてきたわけだが、キエフ・グループの研究としてはこのRMMとMRET、そしてMCTが研究の三本柱である。

RMMとMCTは同じMBCを使用しているので研究領域としてはかなり密接な関係があるが、MRETは少し独立した印象を受ける。しかし昨年末に来日したヴィソツキー博士はRMMテクノロジーにもMRETが導入されていると話していた。RMMのどの部分にどのような形でMRETが導入されているのか詳細については聞くことができなかったが、いずれにしても彼らがこうした研究を複合的に進めていることは間違いない。

そしてこれらの研究のさらに核心部分を示すキーワードを上げると「微生物・金属・細胞」の三つになる。

MCTやその他の微生物がなぜフリタージュ反応を生じるのか。その要因について彼らは『生体系における同位体の元素転換と核融合』の第6章で、微生物の元素組成を中心に検討している。

私たち人間を初めとする動植物や微生物の元素レベルの組成は遺伝情報に基づいて組織化されており、各種属において固有の組成比が維持され、その成長と繁殖において実質的に一定のままである。そしてその組成は大別して酸素や水素などの生体元素と亜鉛や鉄などの必須微量元素によって構成されている。

微生物においても各種属に固有の元素組成があり、そしてその組成比や含有量を一定に保とうとするホメオスタシス的な機能が存在する。もし環境条件や生理学的条件の変化によって元素組成を維持する代謝プロセスに支障をきたした場合は、それを代償・補完するための機能が発現すると考えられる。その究極的な作用が元素転換反応ではないかと彼らは述べているのである。

その一例として彼らは培養基の成分を変化させた微生物による転換実験を行なっており、セシウムのような微量元素を加えることによって鉄54の生成が促進されたことを示している。

ただし、こうした現象の本質的な理解には微生物と金属の相互作用を細胞レベルで解明していく必要性がある。ヴィソツキー博士はこれに関してロシアの微生物学者とコンタクトをとって研究を進めているらしい。いずれその新しい知見が示されることを期待したい。

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2010/03/19

RMMテクノロジー概論(5)

タシレフ博士はキエフ微生物学研究所で主に極限環境微生物を研究している。極限環境微生物とはその名のとおり、熱水鉱床や深海底、有害物質の多い環境でも生存能力をもつ微生物のことである。このような微生物の特殊な生理学的作用に基づいてMBCは調製されている。

極限環境微生物の調査のためにタシレフ博士は毎年一か月ほどウクライナの南極基地を訪れるという。この南極基地<アカデミク・ヴェルナドスキー>でもRMMテクノロジーは活用されている。

Mar1967

左の写真は南極基地の食品廃棄物の処理プロセスを示すものだが、3kgの廃棄物をMBCで発酵させることにより、9日間で0.061kgへと大幅に容量を減少させている。この処理過程では1kgの廃棄物から8~10ℓのメタンガスを得ることができ、さらにその残留物は固形燃料として利用することが可能だという。

Mar1968下の模式図は食品廃棄物の分解プロセスによってメタンと水を生成するバイオマス・プラントの流れを示している。以上よりRMMテクノロジーの特長をまとめてみよう。

(1)RMMテクノロジーはMBCという微生物顆粒を使用して食品廃棄物・有機化合物・重金属・放射性核種といった様々な生体異物を効率的に分解・還元・吸着処理することができる。

(2)その分解プロセスにおいて廃棄物を処理するとともに放射性元素や重金属を回収し、生成するメタンや水素を有用資源としてリサイクルし、産業廃水の浄化を実現する。

(3)MBCは物理的フィルターのような埋め立て・廃棄処分といったコストが不要であり、経済的に水質・土壌の浄化を実現できるプラントの構築を可能にする。

単純なバイオマス・プラントとは異なるRMMテクノロジーの汎用性が少しは伝わっただろうか。この技術はタシレフ博士の特許に基づいているので、その導入に関してはいくつかの具体的条件があるが、自治体や公益法人に売りこめるだけの商品価値はそなえていると思われる。

また今後は石油に代わって水資源の価値が高まってくるとも伝えられる。そのときに時代を制するのは、このような浄化処理とリサイクル技術を手にした者なのかもしれない。

 

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2010/03/10

RMMテクノロジー概論(4)

RMMテクノロジーはすでにキエフやボルゴグラード、リベズノといったウクライナ各都市の工場で実用化されている。ここではクロムを含む電解廃水を処理する実験プラントを見てみることにしよう。

Mar1054 左の写真の右上・右下・左下がその実験プラントだが、このプラントの内部はいくつかのセクションに区切られており、その中にMBCが投入されている。そして右端のセクションから流入してきた廃水が各槽を通過することによって浄化されていく仕組みになっている。MBCは廃水に含まれるクロムを還元吸着し、それが青灰色の沈殿物となって析出している。

これによって廃水はエコロジー的にクリアな水となるわけだが、クロムを吸着したMBCも乾燥・焼却処理によって研磨剤としてリサイクルされることになる。この点において非常に回収効率の良い浄化処理システムといえるだろう。

このようなMBCの特性は放射性元素の回収にも利用されている。上の写真の左上の画像はキエフ市内の産廃処理公社<ラドン>の実験プラントだが、MBCの入った10本の円筒モジュールにキエフ原子力研究所の放射性廃水が投入されて浄化処理が行なわれている。

このプラントで処理された廃水の放射能残留率が各元素について測定されているが、それによるとラジウム226の残留率は6.3%、セシウム137は0.0247%、ウラン238は0.2%、プルトニウム239は0.2%という非常に低いレベルに抑えられている。

ちなみに<ラドン>はロシア最大の産廃処理公社で、半世紀にわたって核廃棄物を処理してきた専門機関だが、すでにMBCの実験プラントはチェルノブイリのサルコファーガス・プロジェクトにも導入されつつあるという。

こうした実験プラントにおいて元素転換反応は生じているのだろうか?その可能性はあるかもしれないが、タシレフ博士はそれに関する実験的検証を行なっていないので、明確なところは不明である。しかし今後はそのような観点からもRMMテクノロジーの有効性を検討する必要があるのかもしれない。

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