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2010/02/26

RMMテクノロジー概論(3)

それではMBCの具体的な処理反応をいくつか見てみることにしよう。

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まず最初の写真はクロム酸塩溶液の入った試験管だが、5000ppmのCr(6)が7日間で完全にCr(3)に還元されたことを示している。

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次の写真は10000ppmの銅イオンを含む硫酸銅溶液だが、これもMBCによって10日間で還元されていることがわかる。

三番目の写真はアニリン染料<ストレート・ブルーKU>の還元分解だが、MBCを構成する微生物はアニリンのベンゼン環を電子レセプターとFeb2640_2 してメタンや二酸化炭素を生成する反応を行なっている。

こうした還元反応におけるパラメーターの変化は水銀の還元処理において測定されている。グラフ上の線1は酸化還元電位、2はpH、3は水銀イオンの濃度、4は光学濃度の変化を示している。1000ppmの水銀が3日間で完全に還元されていることが読み取れる。

このような処理反応を行なうMBCについてタシレフ博士は以下のようなFeb2641 特長を上げている。

(1)耐溶性:MBCは溶液中に安定して存在し、2~3年間はその構造を維持できるので、吸着した生体異物を安全に回収することができる。

(2)適応性:MBCはその代謝作用において非常に広い適応性をもつ共生組織を構成している。

(3)自律性:MBCには長期間にわたって有効に作用するための代謝調整物質・pH緩衝剤や栄養分が含まれているため自立的な代謝活動を行なうことができる。そのため排水の成分やpHを調整する必要性がない。

(4)経済性:MBCの製造には廃棄物が有効利用されているので低コストで大量生産することが可能である。

微生物を利用したバイオマス技術は日本国内でも実現されているが、RMMテクノロジーはこのような特質をもつMBCを効率的に活用した技術であり、設備投資の面でも小回りのきく応用性をそなえていると言えるだろう。

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2010/02/19

RMMテクノロジー概論(2)

RMMテクノロジーはMBCと呼ばれる微生物顆粒を使用して水質浄化や廃棄物のリサイクルを実現する技術だが、その具体的な処理対象は(1)食品廃棄物(2)有機化合物(3)重金属(4)放射性核種といった生体異物(Xenobiotics)である。

だがMBCはこれらの生体異物を何でもかんでも元素転換してしまうわけではない。微生物による化学反応としての一定の制約条件があり、それに基づいて効率的な処理活用が行なわれることになる。

昨年9月に来日したヴィソツキー博士はウクライナ南極基地で実用化されているRMMテクノロジーの動画を上映し、私もタシレフ博士からの資料を翻訳して補足解説を行なった。この会議が行なわれたI社では浄化処理技術の専門家や化学のスペシャリストが同席していたが、終了後に寄せられた質問は「RMMではあらゆる金属を処理できるか?」というもので、私は少なからず失望した。この会議には6~7名ほど出席していたにもかかわらず、いったい何を聞いていたのかという話である。

金属元素にはご存じのとおりイオン化傾向というものがある。ナトリウムから金までの序列を覚えている人もいるだろう。イオン化傾向が異なるということはそれぞれの金属の酸化還元電位が異なることを意味している。そしてその電位は溶媒のpH等によって相対的に変動しうる。

Feb1827 左の図を見てもらいたい。このグラフにはいくつかのクロム化合物の還元反応が示されている。a・bの赤い線は水素と酸素の還元電位を示しており、この中間領域、すなわち標準酸化還元電位-414mV~+814mVの範囲内でのみ生体異物の還元反応が行なわれる。

たとえば式(5)はaとbの範囲内にあるので正常に反応が進行し、Cr(Ⅵ)がCr(Ⅲ)に還元されることがわかる。ところが式(7)はb以下の領域にあるためCr(Ⅲ)の還元反応は生じないことになる。

もちろんpHを変化させることによって還元電位を若干下げることも可能だが、極端にpHを変えるとMBCの生物活性が失われるおそれもある。処理反応を継続させるにはこのような熱力学的・電気化学的条件を考慮しなければならない。そしてこのような制約条件は他の生体異物にも適用されるものである。

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2010/02/12

RMMテクノロジー概論(1)

昨年の年末に「MCTとMBC」と題してヴィソツキー博士の元素転換実験に使用されている微生物顆粒(MBC)について記したが、このMBCを技術的に応用したRMMテクノロジーについて少しまとめておきたい。

このRMMテクノロジーはキエフ微生物学研究所のオレクサンドル・タシレフ博士によって開発された浄化処理技術である。RMMとはRegulation of Metabolism in Microorganismsの略称であり、微生物の代謝作用を調整することによって効率的な浄化処理を実現するコンセプトの下に確立されている。まず最初に、浄化処理に関する基礎的なポイントを確認していくことにしよう。

水質浄化処理の対象となる家庭排水や工業排水には様々な不純物が含まれている。その様態は多岐にわたり、マクロ的な高分子化合物からミクロの原子・イオン等まで幅広く存在する。また分子サイズのみならず、不溶性物質から可溶性物質まで様々な成分が混在することも多い。浄化処理システムにはこのような排水に含まれる成分の量や組成・性質に対して効果的な性能とキャパシティーが求められる。

一般に水質浄化処理のフィルタリング素材としてはゼオライト等の多孔質素材や中空糸膜などが上げられる。これらはミクロンレベルの孔に排水を透過させることにより不純物をろ過する能力をもっているが、微生物のような生物マテリアルとはどのような点が異なるだろうか。

わかりやすく言えばゼオライトなどはパッシブ(受動的)なフィルターであり、微生物はアクティブ(能動的)なフィルターとして作用する。物理的フィルターはその孔径以下の不純物は素通りしてしまうが、微生物はより細かい物質も吸収することができる。また、どちらも耐用期間が過ぎると交換する必要があるが、物理的フィルターはリサイクルが困難であり、廃棄処分にもコストがかかる。一方微生物の場合はリサイクルしやすく、エコロジー的なメリットがあるのである。

もちろん物理的フィルターにも処理できる排水量が多いというメリットがあり、微生物の場合はpH・温度管理が必要になるといった側面もある。そうした個々の利点・欠点を踏まえた上でRMMテクノロジーの概要を捉えていくことにしたい。

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2010/02/05

許されざる自由

ケルヴランが元素転換説を公表してすでに半世紀が経つわけだが、日本ではいまだに桜沢如一や千島学説との関連を取り上げる人々がいる。そこで改めて私の見解を示しておくことにしたい。

桜沢如一はマクロビオティックを普及させた人物だが、『無双原理・易』の中でケルヴランとの出会いを次のように語っている。ケルヴランは長年の研究の末、生物学的元素転換という事実を発見したが、それはあまりに革命的な概念だったため死後に公表することにして暗く寂しい晩年を送っていた。ところが桜沢の講演を聴いた彼は感銘を受け、その学説を公表する決意を固めた、というストーリーである。

そもそもケルヴランと桜沢はいつ頃出会ったのだろうか。第一作『生体による元素転換』がリリースされたのは1962年10月で、その半年前に桜沢は翻訳出版の許可を得たという。すると二人が講演会で出会ったのは1962年の4月ということになる。ところがケルヴラン側の資料によると最初の出会いはもう少し遡ることになる。

F・リビエールの著作『健康とマクロビオティック』に寄稿されているケルヴランの序文には以下のような記述がある。

"Georges Ohsawa, qui sejournait alors en Europe pour plusieurs mois et qui savait tres bien le Francais, en eut connaissance et vint me trouver a mon bureau debut 1961."

大意を示すと、桜沢は数か月間ヨーロッパに滞在しているときに多くのフランス人と知り合い、1961年初頭にケルヴランのオフィスを訪れたという。つまり二人が出会ったのは講演会ではなく、それ以前に桜沢がケルヴランの元を訪ねたというのである。

1961年初頭というと、すでにケルヴランは最初の論文を『レヴュー・ゼネラル・ド・シアンセ』に公表しており、1960年12月には『S&A』に「生命は錬金術師である」という記事が掲載されている。また1961年1月にはセーヌ川衛生評議会で一酸化炭素中毒に関する報告も行なわれている。要するに、桜沢が『無双原理・易』に記したようなケルヴランが死後に元素転換説を公表するつもりだったという話は、とんでもない作り話なのである。

また桜沢は千島学説で知られる千島喜久男をケルヴランの引き合わせたと伝えられ、元素転換説と千島学説が関連していると捉えている人もいるようである。ちなみにケルヴランは桜沢からの情報は全面的に受け入れていた。たとえば『自然の中の元素転換』には近畿大学の小田切教授の研究についても言及されているが、これもおそらく桜沢からの情報と見て間違いない。

ところがケルヴランの9冊の著作や20部以上の論文のどこにも千島博士や千島学説に関する記述はまったく存在しない。つまりケルヴランの一次資料において千島喜久男は存在しない人物であり、千島学説とフリタージュに関連性は認められないということになる。結論として、ケルヴランや元素転換説にまつわる不可解な情報や妄説はすべて桜沢を始めとする日本人が作り出したものだといえる。

桜沢如一を個人崇拝する人々や千島学説を信奉する人々にも宗教の自由は認めるべきだろう。しかし許されない自由というものも存在する。それは事実を歪曲する自由である。フリタージュの領域に真剣に足を踏み入れようとする人はこのことを肝に銘じておいて頂きたい。

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