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2009/09/29

フリタージュの旅 (1)

9月21日、私は福岡へと向かう新幹線の中にいた。

以前からヴィソツキー博士らの来日の調整と会合の準備を進めていたが、当初から波乱含みの幕開けだった。ともに来日を予定していたタシレフ博士から18日に連絡が入り、インフルエンザにかかった模様だという。
明日医師の診察を受けた後に改めて連絡するとのことだったが、状況がつかめないのでヴィソツキー博士にタシレフ博士の容体について連絡をしてもらうように依頼しておいた。

その後容体は一時持ち直したとの連絡が入ったが、やはり来日は難しいらしい。私はタシレフ博士が持参するはずだった資料をヴィソツキー博士に持ってきてもらうようにと改めて連絡を取った。
I社からヴィソツキー博士には成田から福岡空港に向かってもらうという連絡が届いていた。そこで私は博士を迎えに行くために福岡へと向かったのである。

福岡駅から地下鉄で空港に向かい、第1ターミナルでI社の山口氏とおち会った。その後ほどなくして国内便が到着し、ヴィソツキー博士と4年ぶりの握手を交わすことができた。
少し曇りがちな福岡の空を見上げながら、私たちはタクシーで博多駅へと向かった。

今回博士の来日を要請したI社は広島にある。私たちは新幹線で広島へと向かった。ヴィソツキー博士は珍しいものを撮影することが好きらしく、持参した赤いLUMIXで撮影していたことが印象的だった。

I社の配慮で来日初日は長旅の疲れもあるためスケジュールはなく、私たちは広島市内で少し早い夕食をとることにした。ホテル近くの「すし亭」という店だったが、博士は和食には全く抵抗がなく上手に箸を使って寿司を食べていた。ICCFの会議でこれまでに4回来日されているのだから無理はないかもしれない。
夕食を終えて店の外で車を待つ間に「Sushi-tei」のSushiは分かるがteiは何だと尋ねられて答えに苦労した。
この日はそのままホテルにチェックインして旅の疲れを癒すことになった。下の写真は翌朝チェックアウトを待つヴィソツキー博士である。

Viv05

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2009/09/11

MCTとRMM

ヴィソツキー・タシレフ両博士を招へいしたI社から連絡が入り、来日時に行なわれる講演がほぼ決定したという。そのタイトルは以下のとおりである。

「生体系における安定核種と放射性核種の元素転換(MCT)」

「水の記憶作用とその活性技術の有用性(MRET)」

「微生物顆粒による多目的なバイオ・テクノロジー~ウクライナ南極基地における実用例(RMM)」

先の二つはヴィソツキー博士が担当し、RMMに関してはタシレフ博士が講演を行なう模様である。講演時間はそれぞれ1時間程度とみられるが、おそらく世界的に見ても非常に貴重な研究内容が実録された動画とともに報告されるものと思われる。

この講演を日本人向けに補足解説するために準備を進めているが、なかなか興味深い事実も明らかになってきた。

タシレフ博士のRMM技術に関しては以前にも記しているが、その微生物顆粒はウクライナの南極基地で発見された微生物を元にして製造されているという。

ウクライナの南極基地「アカデミク・ヴェルナドスキー」はアルゼンチン領有のガリンデズ島を拠点としている。このガリンデズ島は金属成分の高い火山岩で構成されており、その有害な金属イオンが風化作用などによって広く分布している。さらにこの島は南極地方に属する零下30~40度の環境にあり、有害な金属イオンと合わせて生物には苛酷な環境になっている。

ところが2002年にこのガリンデズ島の土壌から奇妙な微生物が発見された。それは厳しい環境条件にもかかわらず生物活性をそなえていたのである。この微生物に関心を抱いたタシレフ博士はその微生物を単離培養して様々な実験を行なった。そしてそれが金属イオンに対する異常な耐性をもつことが明らかになったのである。

Sep11005 この南極微生物はいわゆる極限環境微生物の一種であるが、様々な金属イオンを吸着・還元する能力をもっている。たとえば7日間で5000ppmの六価クロムを三価クロムに還元したり、10日間で10000ppmの銅イオンを還元することができるという。さらには水銀を吸着したり、放射性廃水に含まれる放射性元素を回収する能力をもっているというのである。

RMMの微生物顆粒にはこのような特異な能力をもつ極限環境微生物が使用されている。そしてそれは様々なゼノバイオティクスに対して有効な作用をもたらすものだという。

ここで注意すべき点はMCTとRMMの相違点である。MCTもRMMもどちらも放射性廃水を処理して放射能を低減することができるが、MCTが放射性元素を安定元素に転換するのに対し、RMMは放射性元素をそのまま吸着しているということである。したがって浄化処理後のRMMは高い放射能をもっているが、それを二次的に処理することによって稀少な放射性元素を回収することが可能になるのである。

これはどちらが優れているかというよりも、効率を比較したうえで技術的にうまく使い分けるべきだろう。それによって設備投資やリサイクルの流れも変わってくるからである。

今月来日される両博士の講演はその技術的有効性をよりよく理解させてくれるものになるだろう。

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