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2008/12/24

MRETの謎

Dec27232 スミルノフ博士が新しく出版したMRETに関する著作「分子共振作用技術:その生理学における機能的作用」が先日届いた。
この著作はスミルノフ博士の共著者H・フィッシャー博士のフィッシャー・クリニックに注文していたのだが、三週間たっても届かないので連絡を取ったところ、発送に手違いがあったと謝罪してきたといういわく付きである。

これまでに私はMRETに関する論文を個人的にも収集しているし、またスミルノフ博士やヴィソツキー博士からも直接送ってもらっているので、内容的にはほとんど見覚えのある写真やグラフが掲載されており、特別目新しい発見はなかった。

私としてはクラスレート・ハイドレートが生理学的にどのような作用メカニズムを通して効果を及ぼすのか、その辺りに関心があったのだが、基本的にこの著作は一般読者に対するMRETのイントロダクションのような形で制作されているらしく、そのような期待に応える内容とは言えなかった。
また、この著作を読むとヴィソツキー博士が大きな役割を果たしていることがよくわかるが、見慣れない名前の研究者がMRETに関する論文を書いている部分もある。おそらくキエフ大学でヴィソツキー博士の指導の下に研究を行なった人間だろう。

この著作の中で一つ気になる点がある。それはMRETアクティベーターの活性時間についてである。
通常MRETアクティベーターの活性時間は30分とされている。では、その時間を長くしたり短くするとどうなるのか?
以前にプロトトロピー平衡について記したが、この著作の中ではMRETの活性時間を15分・30分・45分・60分と変化させて蒸留水のpHの変動を調べている。それによると30分の場合が一番pHの変動が大きく、また最長二週間にわたってpHが変動し続けるということがグラフで示されている。

ところが、ヴィソツキー博士がMRETによる微生物の抑制作用を調べた論文では、30分活性処理した培養基よりも60分活性処理した培養基の方が抑制作用が強くなったという結果が出ているのである。

もちろん蒸留水と培養基では活性化の影響も若干異なるかもしれないが、60分活性化された蒸留水のpHはさほど変化していない。するとpHの変動と微生物の抑制作用には直接的な因果関係はないということになるのだろうか?

このあたりについてはミルクテストやpH計があれば比較実験を行なうことができるかもしれない。資料の理解を深めながら、今後検討したいところである。

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2008/12/15

時代のグロソラリア

今年も残すところあと半月だが、顧みるとやはり『フリタージュの真実』を完成できたことは大きな意義をもつものと感じられる。
これまでケルヴランとその元素転換説については世界的に知られていたにも関らず、その全体像を浮き彫りにしようとした試みは寡聞にして聞かない。その意味では不肖ながら世界的レベルの仕事をしたものと考えている。

ただ、この作品の原資料はほとんどがフランス語であり、それをさらに翻訳して英語版を制作するのはかなり至難の業だろう。ましてやその内容は非常に特殊な専門的研究に関する議論がほとんどである。
しかしいつかはこの本を世界に向けて発信したいという気持ちは抱いている。

それは大きな課題として今後に残されるとは思うが、すでに私は来年に向けた活動を具体的な形にする作業に入っている。その大きな要素としては、現在研究を進めているキエフ・グループのMCTに関する情報を整理していく必要があるだろう。
それとともに、スミルノフ博士のMRETに関しても(フリタージュに直接的な関連をもつものではないが)少し資料的にまとめてみたいと考えている。
具体的な構想としてはまだ固まってはいないが、地道な努力を続けていくうちに、やがて道は見えてくるのではないだろうか。

折しも今年は多くの日本人がノーベル賞を受賞した。それはそれで喜ばしいことだが、彼らはノーベル賞をもらうために何十年も研究を続けてきたわけではないだろう。
ところが政府官僚は「ノーベル賞を受賞するような研究者を育成する」ことにどうしても目がいくらしい。いつの時代も役人の浅ましい考え方は変わらないようである。

研究者というものは、単に仮説・実験・証明というルーチン・ワークで独創的な研究をなしえているわけではない。
思いどおりにいかない試みや失敗の連続から学び、答えのない闇をさまようことによって初めてたどり着くことができるのである。自分の主張を否定され、不毛な批判を浴びることも多々あるだろう。その逆境に長い間耐え続けることができなければ研究者としての人生などまっとうすることはできない。

そのような苦しみに耐えることができるのも、やはり自らの信念とたどり着いたときの喜びがあるからだろう。
こんな道をあえて選択する人間は、当たりさわりなくこじんまりと生きているような者には理解できないと思う。
グロソラリアという言葉がある。求道者が悟りを得たときに発する叫び声のことだそうだが、世間の俗人にはそれは狂気の雄叫びにしか聞こえない。

これからの時代は、流されて生きる者にはますます過酷なものになっていくことだろう。私たちは自らのうちにその答えを求め、自分自身の在るべき本当の叫びを上げなくてはならないのである。

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2008/12/04

迷宮の城に待つもの

MRETウォーターに対する批判を受けて私は、もう少し基礎的な部分から理解を深めないといけないと考えた。そしてそのための資料も収集しつつあるが、現段階で少し整理してみたいと思う。

MRETウォーターは共振性をもつ低周波電磁波を水に照射することによって分子構造を変化させる技術である。
そして以前にも少し書いたことがあるが、それはクラスレート・ハイドレートという構造に変化するという。

クラスレート・ハイドレートとは包接化合物とも呼ばれるらしいが、メタン・ハイドレートという言葉は耳にしたことがあるのではないだろうか。これはクラスレート構造の水の中にメタン分子が取り込まれているもので、「燃える氷」と呼ばれている。
「ハイドレート」とは水和物という意味で、「クラスレート・ハイドレート」または「クラスレート水和物」という言葉で検索してみると、日本にもそのような研究をしている科学者は何人かいるらしい。
しかし、たとえば熱力学的に不安定な環境でなぜ安定状態でいられるのかなど、その物性はまだ完全に解明されてはいないようである。ましてやその生理学的作用に関する研究を行っているのはキエフ・グループとスミルノフ博士だけのようだ。

したがって現段階でクラスレート構造をもつ水が生理学的にどのような効能をもつのかについては、他の研究例がほとんど皆無といった状態である。そのため、たとえクラスレートについて知識のある研究者でも、MRETウォーターの効果については明確な回答をすることはできないだろう。

しかしながらクラスレートに関する研究はかなり以前から行われていることも事実であり、たとえば薬品の成分をクラスレート化した「クラスレート製剤」は実用化の段階に入っている。これは生体に対するクラスレートの親和性を証明するものといえるだろう。

またMRETによる活性化では酸性・アルカリ性の液体はいずれも中性に近づくことが報告されているが、これはクラスレート・ハイドレートのゲスト分子の酸解離定数が変化するためと考えられる。化学的にはプロトトロピー平衡と呼ばれる現象である。

そしてもっとも興味深いことは、クラスレート・ハイドレートは酵素と類似した反応形式をもっているということである。酵素分子は蛋白質が結合した立体構造をもち、その活性部位に入りこんだ基質を変化させる。これはクラスレート内のマイクロキャビティーと構造的に類似している。

ちなみにクラスレートの先駆的研究者の一人であるF・クレイマーは以下のような類似点を指摘している。
(1)クラスレートは酵素と同じ微細な不均一触媒として作用する。
(2)シクロデキストリンのようなクラスレートは酵素と同様にせまいpH領域でのみ反応を生じる。
(3)クラスレートも酵素分子も1個の分子で数多くの基質ないしゲスト分子を変化させる。

このようにクラスレートについて考察を深めていくと様々な考えが浮かんでくる。
たとえばケルヴランも当時の知見に基づいて「活性水」について記しているが、もしかするとその作用にはクラスレートが関わっていたのではないだろうか。
またメタン・ハイドレートのように通常クラスレートは低温・高圧の環境で生成するという。一時期ミネラルウォーターに取り入れられていた海洋深層水も、単にその成分だけではなくクラスレートが関与する部分があったのかもしれない。
そればかりではない。キエフ・グループではこのクラスレート構造がフリタージュ反応にも重要な役割を果たしていると考えているのである。

クラスレートとは「城」を意味するギリシャ語から由来しているという。はたしてその城に待ち受けるものは何ものなのか。引き続き調査を進めていきたいと思っている。

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