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2008/06/20

獅子の爪痕

「フリタージュの真実」によって一つの大きな仕事は完成したわけだが、関連事項について私は継続的に調査を行なっている。最近興味深い資料を発見したので一つ紹介しておこう。
http://www.inra.fr/archorales/index.htm

これはI.N.R.A.の研究者がそのプロフィールとともに研究活動の歴史を証言する機関誌のようなものだが、その中には「フリタージュの真実」に登場した「枢機卿」、S・エニンやG・ペドロなども記事を残している。
だが、その中でも最も興味深いものは錬金術師最大の敵であり、いまやフリタージュの歴史の最後の生き証人となったレオン・ゲゲンの記事である。

「フリタージュの真実」に掲載したゲゲンの写真はフランス農学アカデミーのサイトに収録されているものだが、このArchorales INRAの記事には幼少期からの彼の写真がそのプロフィールとともに掲載されており、研究者としての彼の経歴をうかがい知ることができるものである。そしてそこには錬金術師との闘いの経緯についても触れられている。

その記述をたどっていくにしたがって、私はこの記事が比較的最近に書かれたものであることに気づいた。というのも、そこには私に関することも記されていたからである。その内容を少し引用してみることにしよう。

「・・驚いたことに2006年の終わりに私は、ケルヴランの元素転換に関する著作を書いていたある日本の研究者から連絡を受けたのである。彼は農学アカデミーにおける私の論文を発見し、日本語に翻訳していた。それから三か月間、私たちは様々な議論を通じて意見を交換した。しかし蒙昧主義への回帰との闘いは必ずしも容易ならざるものであった・・。」

私はこの記述を読んで、少し不本意な印象を覚えた。
ゲゲンとの意見交換は正確には2006年の夏から秋にかけてのことである。
そして「フリタージュの真実」に掲載されているゲゲンとの質疑応答の「式部官の回想」は、わざわざ英語版の原稿を送付して彼に直接掲載の許可をもらっている。その意味では、ケルヴランとゲゲンの双方に対して公正かつ客観的な立場からあの本を完成させたつもりである。
しかし彼は私との議論に対し、「蒙昧主義への回帰」という印象を受けたという。おそらくゲゲンにとってはそれが偽らざるところだったのかもしれない。

完成した「フリタージュの真実」を送付して以来、ゲゲンとの連絡は途絶えたままだが、私はこの件についてはもはや何も語るべきではないと考えている。
私は彼という人物を知っているし、彼もまた私という人間をわかっているだろう。
本当にお互いを理解している者にとって、もはや言葉は必要ない。

彼は自らの役割をその歴史の中で果たし、わたしもまた自分という存在をまっとうしたと考えている。
それは「フリタージュの真実」だけが知るところでもある。

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2008/06/16

地震と核融合

少し前から気になっていた本があった。「(仮説)巨大地震は水素核融合で生じる」(工学社)という山本寛という人の本である。
四川省の地震から一月がたつが、この本が届いた次の日に東北で地震があった。
「なかなかタイムリーな展開だな。」と思いながら少しずつ目を通している。

まだ全てを読み終えていないのだが、これは読みにくい本である。
まず科学的な書物なら縦書きではなく横書きにしてほしい。引用されている資料やデータは横書きなのに縦書きの文章と混在されるのは非常に読みにくい。
次に不必要なコラムが多すぎる。この方は残念ながら地質学者ではなく、エンジニアの視点からR・ミルズのブラックライト・プロセスというものを地震発生のメカニズムに適用しているが、世界貿易センターの事件や原発事故に水素核融合が関連しているような記述をしている。
それから「水素原子が水素分子に・・」という、似たような用語の記述は反応式で示してもらいたいものである。
「仮説」と冒頭に銘打つのは良心的だと思うが、結局のところこの本の著者はブラックライト・プロセスをいろんなものに応用したいようである。

そのブラックライト・プロセスは「原子状の水素」が地殻の内部で核融合を生じるメカニズムとして採用されているが、「原子状の水素」が分子にならずにそのままホットスポットになるとは考えにくいように思う。
たとえ高温・高圧下で「原子状の水素」が生じるとしても、地殻に含まれる鉱物と全く反応しないと考えることは不自然なことである。このあたりについては、もう少し詰めが必要だろう。

だが、常温核融合のプロセスを地質学に適用しようとする視点はケルヴランの微量エネルギー元素転換の実験を想起させるもので、個人的には興味深いものである。
今回の東北の地震もプレート・テクトニクスや活断層では説明しにくいものである。たとえそのような指摘を受けても、探知されていなかった活断層によって説明されるのだろう。

日本の地震学は寺田寅彦に始まり、藤原咲平の地渦説や石本巳四雄の岩漿爆発説など地震国独特の豊かな視点に満ちていた。それが海外からのプレート論の受け売りで貧弱な体質に変化していった経緯がある。
今後も同じような地震は各地で頻発することだろう。私たちはいま一度視点を改めて地震現象を捉え返し、この地震国に生きる者としてしかるべき防災体制を確立しなくてはならないと思う。

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2008/06/09

不可視の底流

環境省から名水百選が公表されたようだが、その中には飲用できないものも含まれているという。飲用できないのに名水とは不思議な話だが、おそらくそれらは鉱泉水をさすものらしい。

前回はMRETウォーターについて記したが、「生物学的元素転換」をお読みになられた方はケルヴランが「活性水」について言及していたことを思い出すことができるだろう。フランス産のミネラルウォーターは日本にも多く輸入されていて私たちもよく目にすることができるが、フランスは日本にも負けず劣らずの名水の宝庫といえる。日本ではまだあまり知られていない水も美容や健康のために飲用されているようである。

ケルヴランの記述からも伺えるように、当時からすでに活性水を生成する方法はいくつも知られていたようである。だが重要なことは、私たちはいまだに水ひとつについても共通認識を得られていないという事実である。

その一つにクラスターというものがある。少し興味深いサイトを見つけたので関心のある方はご覧頂きたい。
http://atom11.phys.ocha.ac.jp/water/water_cluster.html
専門的な概念も多いのでなかなか素人には理解しにくい面もあるが、少なくとも私たちが漠然と考えているようなイメージで水を捉えることは間違っているのかもしれない。

MRETウォーターに関してヴィソツキー博士は共振磁場によって形成されるクラスレート・ハイドレート構造を示唆している。その辺りについてはいずれまとめてみたいと考えているが、ここでは単純に考えてみよう。

通常の水分子は一つの酸素原子に二つの水素原子が結合しており、その結合角は104.5°とされている。ちょうどヤジロベーみたいな形である。この水分子がいくつかの集団としてクラスターを形成し、水素結合で結びついたり離れたりを繰り返しているというのが現在の水の空間構造モデルである。

これに電磁波を当てるとどうなるか。。少しむずかしい言い方をすると、水分子に含まれる陽子スピンの配向運動が励起される。簡単にいえば分極性が高まり、二つの水素原子が反発することによって水分子の結合角が少し大きくなる。104.5°から108°に変化するのである。

この108°という数字は何を意味しているかというと正五角形の一つの内角の角度である。これによって水分子は正五角形の形に結合しやすくなる。そしてベルナール・ファウラーの法則に基づいて正五角形を一つの面とする正立体、正十二面体が水分子によって形成される。これが一つのクラスレート・ハイドレート構造である。

化学量論ではこのような構造を包接化合物と呼ぶらしい。メタン・ハイドレートなどもそうだが、このような構造の内部に形成されるマイクロ・キャビティーにゲスト分子が取り込まれることによって、水の記憶作用などが生じているという。
おそらく薬理作用を効率化するMRETウォーターの作用も、成分元素がクラスレートのマイクロ・キャビティーに取り込まれることによって生物の抗体作用から保護されるためだと彼らは考えているようである。

包接化合物についてはまだ完全に解明されていない部分も多く、今後の研究にまつところが大きいが、ヴィソツキー博士によると、こうしたクラスレート構造化した水のポテンシャル・エネルギーがMCTの元素転換反応にも関連しているらしい。

私たちは水から生まれ、水に育まれてきた。しかしその水にはいまだ深い謎が秘められているのである。

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