獅子の爪痕
「フリタージュの真実」によって一つの大きな仕事は完成したわけだが、関連事項について私は継続的に調査を行なっている。最近興味深い資料を発見したので一つ紹介しておこう。
http://www.inra.fr/archorales/index.htm
これはI.N.R.A.の研究者がそのプロフィールとともに研究活動の歴史を証言する機関誌のようなものだが、その中には「フリタージュの真実」に登場した「枢機卿」、S・エニンやG・ペドロなども記事を残している。
だが、その中でも最も興味深いものは錬金術師最大の敵であり、いまやフリタージュの歴史の最後の生き証人となったレオン・ゲゲンの記事である。
「フリタージュの真実」に掲載したゲゲンの写真はフランス農学アカデミーのサイトに収録されているものだが、このArchorales INRAの記事には幼少期からの彼の写真がそのプロフィールとともに掲載されており、研究者としての彼の経歴をうかがい知ることができるものである。そしてそこには錬金術師との闘いの経緯についても触れられている。
その記述をたどっていくにしたがって、私はこの記事が比較的最近に書かれたものであることに気づいた。というのも、そこには私に関することも記されていたからである。その内容を少し引用してみることにしよう。
「・・驚いたことに2006年の終わりに私は、ケルヴランの元素転換に関する著作を書いていたある日本の研究者から連絡を受けたのである。彼は農学アカデミーにおける私の論文を発見し、日本語に翻訳していた。それから三か月間、私たちは様々な議論を通じて意見を交換した。しかし蒙昧主義への回帰との闘いは必ずしも容易ならざるものであった・・。」
私はこの記述を読んで、少し不本意な印象を覚えた。
ゲゲンとの意見交換は正確には2006年の夏から秋にかけてのことである。
そして「フリタージュの真実」に掲載されているゲゲンとの質疑応答の「式部官の回想」は、わざわざ英語版の原稿を送付して彼に直接掲載の許可をもらっている。その意味では、ケルヴランとゲゲンの双方に対して公正かつ客観的な立場からあの本を完成させたつもりである。
しかし彼は私との議論に対し、「蒙昧主義への回帰」という印象を受けたという。おそらくゲゲンにとってはそれが偽らざるところだったのかもしれない。
完成した「フリタージュの真実」を送付して以来、ゲゲンとの連絡は途絶えたままだが、私はこの件についてはもはや何も語るべきではないと考えている。
私は彼という人物を知っているし、彼もまた私という人間をわかっているだろう。
本当にお互いを理解している者にとって、もはや言葉は必要ない。
彼は自らの役割をその歴史の中で果たし、わたしもまた自分という存在をまっとうしたと考えている。
それは「フリタージュの真実」だけが知るところでもある。
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