MRETのエイズ・レポート
最近のニュースだが、「万病に効く水」を生成する機器を販売する会社がその会員とトラブルになっているというものがあった。こうした事件はこれまでにもあったが、人々の「水信仰」はなかなか根深いものがあると思わざるをえない。
もちろんそれも「宗教の自由」ではあるのだが、日本人というものはそうした健康食品や健康機器に対してあまりにも無批判に受け入れてしまう民族性があるのかもしれない。なおかつそのような製品を販売する業者もプロである。普通の人々にとって難解な科学用語を用いてある程度知識のある人をも納得させる内容のプレゼンを行なっているのだろう。
ここでふと思い出したのが、昨年末に出席したバイオプロのセミナーである。このセミナーで日本法人の社長はMRETウォーターでエイズ患者の皮膚の症状が改善した写真を出席者に見せた。それは少し前に私がバイオプロのスタッフに送付したスミルノフ博士の論文に掲載されていたものだった。
スミルノフ博士のMRETウォーターはアメリカで特許が取得されており、また牛乳をMRET化するとヨーグルトになるなどの形でその効果を確認することのできるものであり、その点では得体の知れない健康食品の類いとは全く異なるものである。
しかしながら、そのセミナーではこのエイズ患者のレポートについて詳しい説明は行なわれなかった。そのためおそらく参加者には、まるでMRETウォーターだけでエイズの症状が改善した印象を与えたように思われた。
この臨床報告はスミルノフ博士がタイのピラヨ博士と共同で行なったものだが、一方のエイズ患者のグループにMRETウォーターを飲用してもらい、別のグループとの比較を行なったものである。その結果、エイズ患者のCD4レベルやウイルス量に変化が見られたという。
ただし、この実験ではいずれのグループもARV(抗レトロウイルス薬)を継続的に投与されていた。したがってMRETウォーターだけで症状が改善したのではなく、それはARVの作用を効率化したと考えるのが妥当である。
バイオプロの社長はこの論文に目を通していたにも関らず、そうしたことには全く触れなかった。これでは参加者はMRETウォーターによってエイズが改善したと考えても仕方がないだろう。
セミナー後に参加者と少し話をしてみたが、彼らはある種MRETに過剰な期待をしている印象を受けた。私は自分が使用して確認できた効果について少し話してみたが、どの程度伝わったものかはわからない。
エイズやアルツハイマーに対するMRETの効果を調査したスミルノフ博士の論文も概括的なものであり、その具体的な作用メカニズムについてはまだ作業仮説の部分も大きい。またヴィソツキー博士は従来の水分子の空間構造とは異なるモデルに基づいた理論を提唱している。そのため、MRETウォーターを理論的に理解することはなかなか難しい面があることも確かである。
しかしながら、たとえMRETをビジネス商材としてしか考えていなくても日本には薬事法などがあり、販売者にはその商品に対する十分な説明責任がある。その点をしっかり踏まえた上で普及活動をしていかないと、末端のコンサルタントが不当な説明で商品を勧誘販売して同様のトラブルが表面化する危険性もあるだろう。
バイオプロの適切な普及活動によってMRETの価値が正しく認識されるように願ってやまない。
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