カオス・コスモス・レゾナンス(2)
太陽系の惑星に軌道共振という現象が存在することは前回述べた通りだが、視覚的に分かりやすい例としては土星の輪を上げることができる。
土星の輪にはいくつかの隙間がある。その中で最大のものは「カシニの隙間」と呼ばれている。そしていくつかの隙間によって土星の輪は分割されている。
これらの隙間は偶然に形成されたものではない。それは土星の各衛星の軌道運動と環を形成する粒子が共振しているためである。土星の衛星にはミマス・ヤヌス・エンケラズスなどがあるが、それらの公転周期を調べてみると興味深いことに一定の比率になっているのである。いわば音階でいうところの基音・和音・倍音の関係をそこに見ることができるといえる。
このように太陽系の惑星には共振関係によって一定の調和が保たれているといえるのだが、前回例示したように木星と小惑星の共振がカオス的現象を生じることもある。
こうした関係をそのまま原子核内の核子の作用に置き換えることはできないかもしれないが、陽子や電子だけではなくいくつかの素粒子が結合したアルファ粒子なども一つの波動的存在と捉えることができる。そのために原子壊変ではアルファ粒子が原子核の外部に出てくることができるのである。
そのように考えると、ケルヴランが示唆した核子クラスターにもそれぞれ固有の波動関数とそのパラメーターが適用される可能性もあるのかもしれない。たとえるなら木星と小惑星との共振作用のように、メインとなる核子クラスターと結合・分離する水素・酸素などの核子クラスターがカオス的共振を生じることによって、軌道を外れた小惑星のように通常は起こりえない反応をもたらす場合があるのではないだろうか。
かつては隕石が落ちる現象を非科学的だとして認めなかった時代があるらしい。現代ではそれを信じている私たちも天空から燃える石が落ちてくるのを目撃した人間は稀である。もしかするとフリタージュにもそのような図式は当てはまるのかもしれない。
太陽系の天体は規則正しい軌道運動を描いているというコスモス的世界観に対して、小惑星のかけらが地球の軌道に入り込むというカオス的現象は受け入れがたいものである。そしてそれを実際に目撃した人間はほとんどいない。
しかし流星を長期的に観察していくと、そこには流星群という一定の傾向と輻射点を中心に放射状に流れる特徴があることが判明している。
フリタージュを継続的に研究していたバランジェやツンデルなどにはそこに一定の傾向が見られたにも関らず、単発的に発芽実験を追試しただけの研究者にはそれを見出すことができなかった。それは夜空を一定時間見上げても流星が流れなかったので、隕石など存在しないという論理に等しいものだろう。ましてやそこに天体の軌道共振によるカオス的運動が生じるなど考えられないことに違いない。おそらくそこにフリタージュ研究の歴史的問題点があるといえるのだろう。
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