見えざる危険
新しいフリタージュ・ブックは136ページに達している。登山でいえば七合目は超えているだろう。
しかしケルヴランの研究だけではなく、もう少し広い視野から話を進める必要性も感じている。
一つにはレマール・ブーシェ法やシュタイナーのバイオダイナミック農法との関連である。ケルヴランの元素転換説はこれらの生物学的農法の科学的根拠として深い関わりをもち、いまなおそれを支持する農業団体もある。
だが、レマール・ブーシェ法は創始者R・レマールの死後、紆余曲折を経て衰退し、またE・ハゼリップなどの生物学的農法の支持者は元素転換説によって生物学的農法が異端視されたというスタンスの批判を行なっている。
このあたりは調査の難しいところだが、できるだけ真相を究明していきたいと考えている。
もう一つは、ケルヴランと過去に激しい論争を行なったレオン・ゲゲンの存在である。ゲゲンとはおびただしい数のメールを通じて様々な議論を行ない、また送ってもらったいくつかの論考はすでに翻訳して本書に収録している。
しかし彼の論点を深く理解するには、もう少し踏み込んだ内容を開示すべきだろう。そこでこれまでにゲゲンと交わしたメールの中からそれにふさわしいものを選別して、一問一答の形で収録することを構想している。いわば「シーザーの獅子」への単独インタビューである。
そして最後はビベリアン博士やヴィソツキー博士らの現代のフリタージュ研究についてである。
本書はもともとケルヴランの論文集として企画されたものなので、彼らの研究についてコメントするつもりはなかったのだが、ケルヴランの研究と現代の彼らの成果を対比してみることも興味深いものといえるだろう。ただし、彼らの研究内容を掘り下げていくと膨大な量になるので、あくまで概要として紹介するにとどめたいと思っている。
こうしてみると盛り込むべきものが次々に出てくるが、主題をぼかさないためにもある程度取捨選択は必要になると思われる。映画などに多いのだが、何でもかんでも盛り込めばいいというものではない。作品としてのテーマを際立たせるためにはいかにそぎ落とすかということが重要なのである。そのあたりをわかっていない監督が多すぎるようにも思う。
今年中にはプロトタイプを完成させ、時期は未定だが来春に向けてリリースできる体制を整えていくことになるだろう。ただし、全ての人がこの本を読めるわけではない。
七合目までたどり着いたから気づいたことではあるが、この登山には見えざる危険も伴っている。誰でも誘えばいいというものではない。皆さんも雪山に迷った遭難者の記事を目にしたことがあるだろう。
登れない者は、落ちるか遭難するだけである。そのあたりを踏まえてリリースの形態には配慮すべきだろう。
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