牙をむく獅子
ゲゲンとの話は思わぬ方向に進んでいった。
私はレマール・ブーシェ法の成立プロセスを探ることによってカルマゴルの謎を究明しようとしていたのだが、ゲゲンにとっては生物学的農法さえ疑似科学の類であり、気をつけていたつもりではあったのだが、またもや彼の中に眠るライオンを起こしてしまったようである。
「こういうことを言わなくてはならないのは残念だが、あなたが疑似科学的な話題に終始するのであれば私たちの議論は不可能となるだろう・・。」
またかと思ったがこれでは仕方がない。カルマゴルについては別個に調査することにして、私は話題を変えることにした。
1970年に行なわれた「異端審問」の翻訳を現在進めているが、以前に私はこれを正確に翻訳するには、少なくともあと二つ資料が必要だと書いたことがある。その一つはすでに入手しているエニン報告であり、S・エニンの前文を除けば翻訳もすでに終わっている。
またこの資料にはゲゲンの実験も収録されているので、彼は日本語は読めないが完成の報告としてPDFにして送付しておいた。これを見たゲゲンは少し機嫌を直したようである。
しかしもう一つの資料であるデスター報告はいまだに手に入っていない。これは1969年にフランス農学アカデミーにおいてデスター博士がケルヴランの研究を紹介したものらしいが、「異端審問」の記述の中でわずかに触れられているだけで正確な書誌情報がつかめていない。そのためこれまで国内の業者に二度発注したが、いずれも情報不足ということでキャンセルされている。
デスター報告については資料ファイルを送付したときにゲゲンにも伝えていたが、あいにくバカンスの時期だったのでアカデミーの図書館も閉館していた。
そこで今回再び、この資料の書誌情報を知りたいので調べられるようなら教えてほしいと依頼しておいた。
ゲゲンによると、10月からアカデミーは新しい年次に入るので何かわかったら報告するとのことだった。
はたしてデスター報告が入手できるかどうかは不明だが、今後はアカデミー関係の話題にしぼり「シーザーの獅子」を起こさないようにしたいものである。
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