Enigma
J・ブーシェの著作やその他の資料を調べたが、依然としてカルマゴルの謎は解けないままだった。
そこへ思いがけずゲゲンから久しぶりにメールが届いた。音信が途絶えておよそひと月になるが、私のことを気にかけてくれていたようである。
調査をつくさずにゲゲンに頼ることはよくないとは思ったが、彼ならおそらく何か知っているのではないか。そう考えてこのカルマゴルの謎について「Enigma」と題するメールを送り、ゲゲンに尋ねてみた。
ゲゲンによるとこれは謎ではないという。レマール・ブーシェ農法は約30年にわたってフランスで普及されていた代表的農法だが、カルマゴルはケルヴランの支持の下に何ら科学的根拠もなく喧伝されたものだという。
しかしたとえそうであったとしても、一体誰がカルマゴルを開発したのか、そしてケルヴランもカルマゴルの存在についてなぜ何も語っていないのか、これらについては不明のままである。
そこで私は一つの賭けに出た。フランス農学アカデミーの図書館なら、レマール・ブーシェ法の農業紙「アグリカルテュエ・エ・ヴィ」が収蔵されているかもしれない。この業界紙にはケルヴランも何度となく寄稿している。
私はゲゲンに、もしアカデミーの図書館にこの業界紙が収蔵されているなら、この点についてケルヴランが記事を書いていないか調べてみてほしいと依頼した。
INRAの名誉研究部長に依頼するような仕事ではないことは十分承知しているが、彼が「シーザーの獅子」なら私もフリタージュの鬼である。フリタージュのためなら多少手荒いこともこなさなくてはならない。
ちなみにレオン・ゲゲンはフリタージュの完全な否定論者であることを除けば、非常に尊敬に値する人物である。
これまでに私はいろんな外国人と接する機会があったが、なかには自己主張が強いだけの人間もいた。
しかしゲゲンは私の様々な質問に対して適確な回答を行ない、私が持っていない資料は迅速に送付してくれた。
4人の孫がいるという式部官は、30年以上も農学研究に携わる一流の科学者であると同時に一流の人物である。
今回の依頼は少し無理があるかもしれないが、彼ならレマール・ブーシェ法の実体について何かヒントを授けてくれるかもしれない。その回答が来るまでさらに調査は続けていくつもりである。
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