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2006/03/27

ダーク・ロジック

フリタージュの使徒ルカとの交渉は難航が続いている。10000ユーロに対して50ユーロを提示してからしばらく連絡が途絶えていた。150万を7000円でというのは少し厳しかったかもしれない。しかしこの種の著作としては極めて妥当な金額である。

それから改めてメールのやりとりを続けているが、話は意外な方向へ発展していった。彼は数人の共同者とともにイタリアでマクロビオティックセンターを設立しつつあるとのことで、桜沢如一の著作を送ってほしいとの意向を示してきた。

マクロビオティック関係の著作は私も数冊もっているが、桜沢の著作は翻訳されているものも多い。そこでいくつかリストアップしてルカの要望を確認してみた。彼はおおむね了承した模様で、本日改めて連絡が入る予定である。

e-Bayの方にも相変わらず出品しているみたいだが、どうも彼はこの著作を受注生産しているらしい。ともあれ交渉がうまくまとまることを期待する次第である。

ルカの共同者はマクロビオティック界の重鎮の久司道夫氏とも連絡をとってセンターの設立を進めているらしい。この久司道夫氏は三五館から『原子転換というヒント』という著作を出版している。私もはずみで買ってしまったが、これは問題の多い著作である。

文中に見られるカウエスという人名はローズの誤りであり、ケルヴランの著作として上げている『プラズマの原子転換』はおそらく『微量エネルギー元素転換』の間違いだろう。しかしこの程度はかわいいものである。

久司氏はこの著作の中で、植物の葉緑素に含まれるマグネシウムが、動物の体内ではヘモグロビンの鉄に転換されると記している。だが、そこには看過できないダーク・ロジックが潜んでいる。

マグネシウムは二つの酸素と結合して鉄を作り出すという。しかしこれでは質量数が合わず、ニッケルの同位体になるはずである。そこで彼は「1秒以内に」不要な粒子が放出されてニッケルからコバルト、そして鉄への転換が生じるのだと述べている。ではなぜそうなるのかについては何の説明もない。

フリタージュ理論でいうと、マグネシウムが二つの酸素クラスターと結合すること自体まずありえない。たとえそれによってニッケルができたとしても、そのニッケルは5.9日ぐらいの半減期をもっている。それがなぜ1秒間で鉄に転換して安定するのだろうか。桜沢のPU原理にこじつけて勝手な元素を組み合わせ、「不要な粒子が放出されて」勝手な元素ができるのであれば、ケルヴランのいう核子クラスターもフリタージュ理論も必要ないわけである。

マクロビオティック界で信者商売をするのは勝手だが、ケルヴランや常温核融合を手前味噌に利用する姿勢は許しがたいものがある。ことに多くの人々に影響力を持つ人物だからこそ、こうした記述にはしかるべき配慮がなされるべきではないだろうか。

クロロフィルからヘモグロビンへのこのような元素転換を検証したいのであれば、千島学説の腸造血説にならい、腸内細菌を単離培養してマグネシウム塩を与え、鉄同位体の変動を確認するなどの実験をまず行なうべきである。その上で仮説として述べるのであればまだ検討の余地はあるが、この著作における久司氏の妄言に耳を傾けるのは、ある意味で哀れな信者たちだけであろう。

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2006/03/17

ルカ福音書

私は海外のオークションサイトを見るのが好きである。そのわりにはたいした物も買わないのだが、これが本当のウインドウ・ショッピングかもしれない。

ところが最近興味深いものを見つけた。e-Bayのイタリアのサイトだが、kervranで検索をかけると見慣れない本が出品されている。Kervranの検索で出てくるのはケルヴランの名前を利用した健康食品が大半だが、その本は原書の類とも少し様子がちがっていた。以下を参照されたい。http://cgi.ebay.com/Tesi-di-Laurea-in-Ingegneria-sulla-cosiddetta-alchimia_W0QQitemZ7015651980QQcategoryZ118322QQrdZ1QQcmdZViewItem

イタリア語なので少しわかりにくいかもしれないが、調べてみるとこの本はモデナ大学工学部のルカ・キエージという人物が卒業論文として制作したものらしい。そして目次を見てみると、錬金術から常温核融合までを網羅した体系的な研究書のようである。またケルヴランの研究についても、おざなりな紹介だけではなく、綿密な調査を行なっていることが伺える。何より驚いたのは1万ユーロというその出品価格だが、これは150万円相当であり尋常とは思えない。イタリアン・ジョークなのかもしれないが、ともかく連絡を取ってみた。

皆さんに翻訳書を購入して頂いたおかげで少しはフリタージュ基金も潤ってはきたが、さすがに150万の資料を買う余力はない。これまでムッシュ・グラパやヴィソツキー博士が蔵書や著作を無償で寄贈してくれたのは、私のフリタージュ活動を彼らが理解してくれたためでもあるが、初対面のルカにそれを求めるのは無理がある。そこで私はこの卒業論文と私の持っている資料との交換を申し出た。

ルカからの返事は私の資料にも関心はあるが、交換には応じられないというものだった。しかし私のHPを見た彼は、ケルヴランの研究者である私に敬意を表し、特別に価格交渉には応じると言ってきた。私は1万ユーロは高すぎるので1冊50ユーロなら2冊買ってもいいと伝えておいた。つまり100ユーロ以上出す気はないということである。

これに対する回答はまだ届いていないが、50~150ユーロの間で手を打とうと思っている。そこで、このブログをご覧の方だけにお知らせしたいのだが、交渉がまとまり次第オーダーしたいと思うので、もし関心のある方はご一報いただきたいと思う。

内容は約170ページだが、キエフ・グループの研究や常温核融合についても言及されており、おそらくフリタージュの研究書としては第一級の著作である。イタリア語なのがちょっとつらいところではあるが、私のHPや翻訳書をご覧の方には概要は理解できるだろう。何よりフリタージュの研究書としてはCD-ROMも付属している点が資料的にも興味深い(ただしパワーポイントが必要らしいが)。あとはフェイレ博士の研究やグラパの実験を加えると完璧なものになるだろう。

ちなみにイタリアの書店をいくつか探してみたが、この著作はやはり卒業論文として限定制作されたもののようで、書店には流通していないようである。したがっておそらく入手できるのは今回限りではないだろうか。しかし相手が200ユーロ以上を提示してくるなら交渉は決裂である。その点先行きは不透明だが、成立した場合には関心をお持ちの方とその成果を共有したいと思う次第である。

 

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2006/03/10

不穏な興隆

ケルヴランの一次資料もそろそろ完璧かなと思っているのだが、意外なことにまだ見たことのない論説などの情報が少しずつ入ってきている。そうした記事の内容は著作のものと重複する部分もあるが、意外な切り口から語られるテーマであることも多い。

最近入手したものの一つに少し面白いものがあるので紹介したい。それは1972年の『レゾ・プレゼンテ』誌に掲載されているケルヴランへの批判記事である。

それはパリ大学の植物生理学者のR・エルレ教授によるものだが、タイトルも「生物学的元素転換の不穏な興隆」となかなか意味深長である。この人物の名前はケルヴランの著作や論文には出てこないことから面識はないものと考えられるが、当時のブーシェやレマールといった生物学的農耕法の主唱者に対して、ケルヴランの元素転換説は理論的支柱としてすでに大きな影響力を保っていた。それに対して懸念する意向からクリティカルな検討を行なったものらしい。

他の一次資料の翻訳で手が付けられないので、その内容の詳細については未詳ではあるが、8ページにわたってなかなかまとまった議論を展開しており、興味深く思われる。ケルヴランに対する批判としては『ニュー・サイエンティスト』誌などの記事が知られているが、否定のための批判といったニュアンスが強く、骨のある内実には欠けていた。

エルレ教授は植物生理学者の立場から硝酸イオンの代謝やエネルギー的な問題など、ケルヴランの著作の内容に基づいてわりと綿密に検討している。こうした批判記事は逆の方面から問題の本質を照らし出す意味でも重要なものである。

これまでにも書評レベルで批判や疑念を呈する者の記事を見たことはあるが、このような体をなした論説は初めてである。そしてその中で引用されているケルヴランの記事にも新しい発見があった。

論文集が果たしてどのような形になるのかはまだわからないが、このような当時の思潮が反映されたストーリーに仕上げてみるのも悪くないかもしれないと思った次第である。

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2006/03/03

花粉症と合体ロボ

少しずつ春めいてきて花粉症になる人も多い季節である。毎年のことかもしれないが、この花粉症への対策として様々な効能をうたう製品が出されている。

私自身は花粉症ではないのだが、そういう商品のパンフレットがやたらと目に入る。面白いもので、そうした商品の中には抗原となる花粉を使用したものも多い。たとえば花粉のエキスをカプセルに入れたものや花粉を黒焼きにしたタブレット状のものもある。それらは花粉エキスを消化器官から吸収することによって花粉に対する抗体を生成するのだという。「毒をもって毒を制する」などという宣伝文句とともにまことしやかにそのような免疫作用が語られている。

本当に効果があるのかどうかは私は試すことはできないが、口や鼻ではアレルギーの元となる花粉を、腸管で吸収すれば免疫グロブリンの作用で耐性ができるというのは少し不思議な話ではある。

免疫グロブリンとか抗体というと難しい医学用語のように思われるが、体内の各酵素がそれぞれの使命を帯びた戦士とすれば、抗体は様々な外敵と戦うための合体ロボットと言えるだろう。昔のアニメでいえばゲッターロボやダイアポロン、トランスフォーマーみたいなイメージで捉えると親しみがわくのではないだろうか。

こうした合体ロボはアレルゲンとなる様々な外敵を認識し攻撃するために、いろんなフォーメーションで各パーツを組み換えて戦闘体勢に入る。しかし、そのメカニズムにはまだ不明な点も多い。たとえば自己免疫疾患やある種のアレルギーの場合に生じる過剰な免疫作用も、先のように腸管から抗原となるアレルゲンのエキスを吸収させると症状が緩和するという報告がなされている。これがなぜそうなるのかについては様々な説があり一定していない。

おそらく腸管から吸収される過程で、それまで混乱していたアレルゲン認識レーダーがキャリブレーションされるのではないかと思われるが、合体ロボットもレーダーに異常があると町全体を破壊してしまうらしい。

このレーダーに相当する信号系統はホメオパシーにも通じるものかもしれない。そしてそれは、もしかするとフリタージュのスイッチを入れる生体メカニズムとも共通しているのではないだろうか。

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