ダーク・ロジック
フリタージュの使徒ルカとの交渉は難航が続いている。10000ユーロに対して50ユーロを提示してからしばらく連絡が途絶えていた。150万を7000円でというのは少し厳しかったかもしれない。しかしこの種の著作としては極めて妥当な金額である。
それから改めてメールのやりとりを続けているが、話は意外な方向へ発展していった。彼は数人の共同者とともにイタリアでマクロビオティックセンターを設立しつつあるとのことで、桜沢如一の著作を送ってほしいとの意向を示してきた。
マクロビオティック関係の著作は私も数冊もっているが、桜沢の著作は翻訳されているものも多い。そこでいくつかリストアップしてルカの要望を確認してみた。彼はおおむね了承した模様で、本日改めて連絡が入る予定である。
e-Bayの方にも相変わらず出品しているみたいだが、どうも彼はこの著作を受注生産しているらしい。ともあれ交渉がうまくまとまることを期待する次第である。
ルカの共同者はマクロビオティック界の重鎮の久司道夫氏とも連絡をとってセンターの設立を進めているらしい。この久司道夫氏は三五館から『原子転換というヒント』という著作を出版している。私もはずみで買ってしまったが、これは問題の多い著作である。
文中に見られるカウエスという人名はローズの誤りであり、ケルヴランの著作として上げている『プラズマの原子転換』はおそらく『微量エネルギー元素転換』の間違いだろう。しかしこの程度はかわいいものである。
久司氏はこの著作の中で、植物の葉緑素に含まれるマグネシウムが、動物の体内ではヘモグロビンの鉄に転換されると記している。だが、そこには看過できないダーク・ロジックが潜んでいる。
マグネシウムは二つの酸素と結合して鉄を作り出すという。しかしこれでは質量数が合わず、ニッケルの同位体になるはずである。そこで彼は「1秒以内に」不要な粒子が放出されてニッケルからコバルト、そして鉄への転換が生じるのだと述べている。ではなぜそうなるのかについては何の説明もない。
フリタージュ理論でいうと、マグネシウムが二つの酸素クラスターと結合すること自体まずありえない。たとえそれによってニッケルができたとしても、そのニッケルは5.9日ぐらいの半減期をもっている。それがなぜ1秒間で鉄に転換して安定するのだろうか。桜沢のPU原理にこじつけて勝手な元素を組み合わせ、「不要な粒子が放出されて」勝手な元素ができるのであれば、ケルヴランのいう核子クラスターもフリタージュ理論も必要ないわけである。
マクロビオティック界で信者商売をするのは勝手だが、ケルヴランや常温核融合を手前味噌に利用する姿勢は許しがたいものがある。ことに多くの人々に影響力を持つ人物だからこそ、こうした記述にはしかるべき配慮がなされるべきではないだろうか。
クロロフィルからヘモグロビンへのこのような元素転換を検証したいのであれば、千島学説の腸造血説にならい、腸内細菌を単離培養してマグネシウム塩を与え、鉄同位体の変動を確認するなどの実験をまず行なうべきである。その上で仮説として述べるのであればまだ検討の余地はあるが、この著作における久司氏の妄言に耳を傾けるのは、ある意味で哀れな信者たちだけであろう。
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