『生命の暗号』
先日『生命の暗号』という本を買った。これは筑波大学名誉教授の村上和雄氏の著作である。村上氏はテレビ出演もされたそうだが、あいにく私は見ていない。最初に書店で立ち読みしたときには、オペロン説についての記述もあったので少し関心はもったと言える。しかし私はこの手の本はほとんど読まない人間である。
学者の書く本というのはだいたいスタンスが知れている。それなりの研究もしており知識もあるので説得力もある。また学生への講義もしてきているので話の組み立ても筋が通っている。しかし、彼らがその専門分野の窓から社会をのぞいてものを書くとき、どうしようもない見識の狭量さが目につくのである。脳の研究をしている人間はすべて脳内現象から、遺伝子の研究をしている者は全てが遺伝子の作用に基づいての話である。それにあいにくと私は翻訳で忙しい。日本の研究者のよた話に付き合っている暇はないのである。
しかしこの本は何度か本屋で立ち読みをする機会があった。4度目に立ち読みしたとき、この著者がレニンという酵素のゲノム情報を解読していることを知った。レニンは腎臓に含まれる酵素で、いくつかのホルモンと関連して血圧上昇のプロセスに関与している。そしてそのホルモンの一つに、ケルヴランが元素転換との関連を指摘したアルドステロンがある。フリタージュとの直接の関連性はないにしても、レニンの研究者なら話は聞いてみてもいいだろう。そう考えて読むことにしたのである。
そしてほぼ大半を読み終えたところだが、なかなか読ませる文章であり、内容的にもおもしろい。知っていることも多かったが、啓発されるような記述も含まれていた。
やはり遺伝子の話がメインではあるが、その機能発現には人間の精神活動も大きく関わっているのではないかという言説はうなづけるものがある。ただ、全てがそうではないことはフリタージュの観点からも明らかではある。私たちが意識レベルで遺伝子のスイッチを自由にON・OFFできるようになれれば、ある意味で遺伝子治療などの必要性はなくなるわけである。
たしかに遺伝子工学からはこれまでにない新薬の開発などの可能性もあり、有用な技術ではあるが、その一方で全てをコントロールできない現状では、安易な未来像を描くことはできないだろう。村上氏もレニンの作用にはまだ未解明の部分があり、それが高血圧とどのように関連しているかはゲノム情報が明らかになったいまなお研究中であるという。
私としてはそこに元素転換の可能性を追究してもらいたいところではあるが、日本の研究者にその枠を超えた仕事をしろといっても無理な話だと考える次第である。
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