フリタージュ活動の原点(8)
不規則な生活と過酷な仕事を続けるうちに、いつしか奇妙な症状が体に出はじめていた。運転をしたり少しコーヒーを飲むだけで目が充血したり、膝がしびれたように痛むようになった。病院で診察を受けたりしても何ら異常はないとのことだった。しかしその症状は確実に体を苛むようになっていった。特に膝の痛みはまともに立ち歩きができないほどになっていった。
いま振り返ってみても、あまりフリタージュ活動に関係することではないので省略すべきところだが、結局そのような次第で仕事を転職することを考えた。しかしここからがまた苦難のはじまりで、いくつかの職を転々としたのだが結局自分で仕事をすることに決めたのである。
すでに父親の会社もなかったのだが保険関係での顧客が続いていたので、まずは保険代理店の資格を二つ取得した。これが今の朔明社の原点である。そして会社勤めをしていた頃に、ある知人が健康食品を開発するというのでわずかながら開発資金を出資協力した。その経緯で代理店の資格を頂いたこともあり、基本的に朔明社は多種多様な代理店業というスタイルで今日に至っている。
ところで最近ではネットワーク・ビジネスやアフィリエイトなどが盛んである。私もそういうビジネスに誘われたりするのだが、どうも気持ちが乗らない。お金儲けは悪いことではないと思うし、まとまったお金が入ればケルヴランの翻訳書をもっと良いものにできると思うのだが、いま一つしっくり来ないのである。もっとも私がお金に目を血走らせる守銭奴であればケルヴランの翻訳などしていないだろう。翻訳書を完成させる作業を時給で考えると、あまりにも非効率な仕事といえるからだ。
ともかくもこうして自分の牙城を築いたわけだが、そんな中でケルヴランの翻訳は66Librも73Librもかなり滞っていた。そして改めてこれまでに翻訳した原稿を見直してみて、やはり完成させるのであれば基本的な著作である66Librを優先すべきではないかと考えるようになった。
もはや会社の人間関係などのしがらみもない。これからは自分自身といかに向きあうかである。ケルヴランの翻訳を完成させることをようやく本格的に考えたのはこの頃だった。それは世俗をたちきった者でなければ決して実現することのできない、大いなる闇の中での開悟であったといえるだろう。
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